
(NATOの中国駐ユーゴ大使館爆撃への抗議特集号)
1999年(平成11年)5月11日発行 1994年(平成6年)11月 1日創刊
編集前記●読者の皆さんへ・・・・・・・・・・・・・・・・・・COM編集部
時事評論●誤爆か襲撃か・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・盧 存偉
抗議文書●NATOによる中国大使館爆撃に強く抗議・・・・・・・・徐 剛
抗議文書●全日本中国人博士協会の抗議文書
抗議集会●STOP the 空爆!!(ユーゴに平和を市民集会とデモ)・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・空爆反対ネットワーク
国内動向●事件の経過、抗議活動が全国に広がる
海外動向●世界各地の中国人抗議
国際社会●各国の動き
御存じの通り,5月7日中国駐ユーゴスラビア連邦共和国大使館は、北大西洋
条約機構(NATO)により爆撃されました.もとの理由はどうであれ,今回の
事件は中国主権への侵害であることに違いありません。全世界の中国人は憤慨し
ています.中国政府はアメリカを始めとする北大西洋条約機構に正式な謝罪表明
及び原因徹底究明を要求しています.本編集部は今回の事件に対して,様々の角
度から情報を収集し,本特集を皆さんにお届けします.
なおアメリカ大統領の電子メールアドレスはresident@whitehouse.govで,
抗議文を送る際に使ってください。
5月7日早朝、中国駐ユーゴスラビア連邦共和国大使館は、北大西洋条約機構 (NATO)による3発のミサイルで爆撃され、3人が死亡、20数人が負傷し た。これについて、アメリカのマスコミをはじめ、西側の諸国のマスコミは爆撃 を「誤爆」と主張しているが、中国のマスコミは「襲撃」としている。
大使館は3発のミサイルに攻撃された。1発は上から下に、大使館の5階から 地下1階に攻撃し、1発は大使館の真っ正面から4階を命中し、もう1発は大使 館のオフィス棟と大使公邸の間で爆破した。中国軍事専門家の意見によれば,こ のような攻撃方式は「三面攻撃」や「中心向き攻撃」とよばれる。これは重点目 標に対する致命的な攻撃方式で、決して誤射ではないと見られる。
実は、5階建ての大使館は非常に目立ち、周辺200メートル以内には、他の 建築物があまり無く、駐車場、芝生、木などしかないようだ。軍事目標を誤認さ れる可能性はほとんどない。また、大使館はNATOが攻撃しようとした目標か ら1キロも離れている。今回NATO軍が使っているミサイルは先進的な衛星コ ントロール、目標ロックシステムであり、良い天気の際、3枚ミサイルが同時に 攻撃誤差は1キロ以上になることはまず不可能だ。大使館が爆撃された時、良い 天気であった。以上の分析によれば、大使館は攻撃の目標にされたことは間違い 無い。
「誤爆」が成立するなら、唯一の可能性は中国大使館がユーゴの軍事施設と誤 認されたことである。すなわち誤認による誤爆だ。これについて、NATO側は、 「悲劇的かつ屈辱的な事実だが、われわれの地図に、中国大使館は攻撃目標の付 近になかった」と述べた。
5月7日、駐ユーゴ中国大使館がアメリカのと思われるミサイルの攻撃を受け、 3人の同胞が死亡し、多数の大使館員が負傷した。外交公館に対する攻撃はウィ ーン条約を違反し、野蛮で卑劣な行為である。NATOの空爆によって既に数百 人の罪のないユーゴ市民が殺され、今度はとうとう第3国の外交使節までが攻撃 の対象となってしまった。
当然なことに、在日を含め全世界の中国人がアメリカの主導するNATOに猛 烈な抗議を行っている。
アメリカとNATOは、この爆撃は意図したものではなく、「ひどい過ちを犯 した」と遺憾(REGRET)の意を表明した。しかし、正式な謝罪はしていな い。「過ち」の原因も公表していない。これでは我々は納得できず、怒りはおさ まらない。NATOが事実を調査し、公表し、また「誤って」人を殺した責任を 負う者を処罰するまで我々は抗議を続けるしかない。
もしNATOが上記の諸要求を受け入れるなら、中国政府はアメリカとの関係 を決定的に悪化させるべきではないと考える。中国もアメリカも大国として世界 の平和と安定に特別な責任を負い、正常な中米関係はその保証である。中国の戦 略的目標は近代化である。そのためにもアメリカを含む世界各国と平和互恵の関 係を築きたい。今回の出来事は中国人を一層団結させるであろう。
中国人の殆ども中国政府も軍事力の行使はコソボ問題の解決につながらないと 考え、NATOの空爆に反対してきた。それだけに、多くの人は今度のNATO の爆撃は中国に対する報復ではないかと感じている。中国が当事者となった今、 安保理常任理事国でもある強い立場を生かし、ロシアとともに、国連の場での問 題の政治的平和的解決を主張し、実現させる機会が一層大きくなったと考える。 是非停戦を実現し、無意味の殺戮をやめさせてほしい。
日本の世論はNATOの空爆に対して概ね反対論が多い。心強い。日本政府に も、軍事力の行使に「理解」を示せず、日本国憲法の精神に則って、問題の平和 解決を主張してほしい。今、日本の参議院で日米ガイドライン法案を審議してい るが、すぐに鉄砲を打つアメリカに追従していく危険を認識すべきだ。
今回の爆撃にはもう一つの側面がある。天安門事件10周年を3週間後に控え、 爆撃が中国人に与えた衝撃の大きさは事件を忘れさせる、あるいは、思い出させ ないのに十分な効果を持つであろう。
今回のNATOによる中国大使館への爆撃に対して、全日本中国人博士協会の 会員からは強い憤慨の声が上がった。理事会が作成したアメリカ大統領宛の抗議 文を、会員たちは個々に電子メールで送った。抗議文は大使館攻撃に最大級の抗 議をした上、責任者の処罰と被害者への賠償を要求し、空爆の停止とコソボ問題 の平和解決を呼びかけた。
To: president@whitehouse.gov
Dear President Bill Clinton of the United States of America,
I, a member of the Chinese Academy of Scientists and Engineers in Japan, hereby lodge our strongest protest and severest comdemnation against the United States of America and you as its president for your barbaric attack on the Chinese Embassy in Belgrade, Yugoslavia on May 7, which killed 3 Chinese journalists and seriously injured many other Chinese diplomat personnel.
Attacking diplomatic missions and diplomatic properties is obviously against international laws and international norms of human rights, which the United States of America have always pressed other countries to follow.
You claim that the attack was not intentional. And it was reported an old map was used. How could it be possible that the embassy of an permanent member of the United Nations Security Council was not indicated correctly in your map for exclusion from possible attacks? Who is responsible for this "terrible mistake"? We strongly demand you fire and punish the CIA boss and others who are responsible for the loss of life, though this does not return our fellow countrymen alive.
We appreciate your letter to our President Jiang Zemin for recognizing the "terrible mistake" of attacking the Chinese Embassy, but that is not enough. NATO's bombings have killed hundreds of innocent people under the name of protecting innocent people from being killed. How many more innocent people are you going to kill? It is time to stop bombing! It is time to go back to the negotiation table! It is time to find a political and peaceful solution to the Kosovo problem within the framework of the United Nations!
Finally, you should pay compensations to the families of the innocent victims, which is the minimal responsibility as a responsible man and a responsible nation.
Sincerely,
name
title
May 10, 1999
ユーゴスラヴィアへのNATO空爆の即時停止を求める集会とデモのお知らせ
■日 時 5月16日(日)13:00〜
■集合場所 港区桧町公園
■集合時間 13:00
■集会開始 13:30
■デモ出発時刻 14:30
■コース
檜町公園->防衛庁郵便局左->六本木通り->溜池右->虎の門左->
霞が関1丁目裁判所右->日比谷公園霞門から入場->解散
■解散後
有志でアピールと「Mirの会」が集めた空爆署名をアメリカ大使館に届けます
3月24日以来、NATO軍によるユーゴ全域に対する空爆が続いています。攻 撃は、軍事施設のみならず病院、学校、難民施設にまで及び、5月8日には中国 大使館をも破壊しました(この日までの死者は157人)。「コソボ問題の解決 のための空爆」は、現在も罪のない一般市民を殺傷し続け、膨大な数の難民を流 出させています。
NATOが自衛のためでもなく国連安保理の決議も得ず独断専行したこの行為は、 侵略戦争に他なりません。また、中国大使館への空爆は「中国の主権」侵犯であ るばかりでなく、空爆に反対する世界の国々と人々に対する脅威でもあります。
私たちは、「武力による紛争解決」という手段を許すことはできません。コソ ボの戦闘を激化させ、かえって人権と脅かし、難民を増やし、民族間のいわれな い憎しみを増幅するだけだからです。
空爆の即時停止を、平和的解決を求める集会とデモにぜひご参加ください。
お問い合わせは:空爆反対ネットワーク(次の4団体で構成されています)
Mirの会
担当 木村元彦 PHS 070-5881-0437
日本・ユーゴスラビア協会
担当 土田純二 TEL 090-1848-3798
042-376-3798
「旧ユーゴの子どもたちを支援する会」
担当 安藤八重子 TEL&FAX 044-866-5785
「ヤブカ募金−旧ユーゴの子どもを援助する会」
担当 中山康子 TEL&FAX 03-3924-2342
中央テレビのベオグラード特派員は8日昼のニュースで、同国大使館の被弾に ついて「ミサイルは最上階の5階から1階まで貫通した」などと被害の模様を伝 えた。それによると、最初に被弾したのは北京時間8日午前5時45分(日本時 間同6時45分)。続いて2発が大使館ビルの4階側面、大使館と大使公邸の連 結部分に命中、施設を大破させた。また、ガス管に引火して連鎖爆発を引き起こ したという。
9日の毎日新聞社の報道によると、ベオグラードの中国大使館爆撃事件で、政 府は9日未明、外務省の王国章氏(前次官補)をトップとする調査団を特別機で 現地に派遣した。政府は3基のミサイルが別方向から大使館を直撃したとして、 NATO側の「誤爆」説明を受け入れておらず、現地で詳細な検証を行うとみら れる。
8日の新華社の報道によると、四川省の省都、成都市で8日、市内の学生数万 人が米国への抗議デモを行った。
9日の共同通信社の報道によると、成都で9日未明、ベオグラードの中国大使 館爆撃に怒った群衆が米総領事公邸構内に突入し、建物に放火した。火は間もな く消し止められ、けが人はなかった。北大西洋条約機構(NATO)による7日 の中国大使館爆撃以降、中国にある米国の外交施設が放火されたのはこれが初め て。北京の米国大使館スポークスマンによると、中国の警備当局は催涙ガスを使 って群衆を解散させた。逮捕者の有無は不明。
9日の時事通信社の報道によると、胡錦濤国家副主席(党政治局常務委員)は 9日夕、中央テレビを通じ、ベオグラードの中国大使館被弾事件について談話を 発表した。この中で、全国で展開されている学生抗議デモを「愛国的熱情の表れ 」と評価するとともに、「過激行為の出現を防がなければならない」と強調。学 生・市民に社会安定を乱す行動に走らないよう呼び掛けた。学生の反米デモにつ いて政府指導者が立場を明らかにしたのは初めて。
9日の共同通信社の報道によると、北大西洋条約機構(NATO)軍によるベ オグラードの中国大使館爆撃を受け、9日付の国内各紙はいずれも一面に政府の 「最も強い抗議」の声明と、北京をデモ行進する学生の写真を大きく掲載。犠牲 者の写真や読者の声など国内外の動きを報道。
人民日報は4ページの紙面のうち3ページを使って「NATOの野蛮な爆撃」 と非難する記事などを掲載。死亡した光明日報の許杏虎記者らが顔面から血を流 し担架で運ばれる写真や、「中国人民を侮るな」と書いた火山が噴火し、NAT O軍兵士とミサイルを吹き飛ばす漫画も掲載。同紙は、北京のほか広州で十万人、 成都で数万人、上海で数千人規模のデモが行われ、抗議が全国に広がっているこ とも伝えた。
また北京青年報は「NATOはナチス」との横断幕を掲げて行進する学生らの カラー写真を大きく掲載。「爆撃はわれわれへの侵略に等しい」といった一般読 者の憤りの声も紹介した。
中央テレビなどのテレビも、8日夜からニュースのほとんどがデモ行進などの 報道となった。
9日の毎日新聞社の報道によると、ベオグラードの中国大使館が北大西洋条約 機構(NATO)軍の爆撃を受け、多数の死傷者が出た事件で、9日も、8日に 引き続き北京市、上海市などで大学生らが数万人規模の抗議デモを続けた。
北京では9日朝、前夜から引き続いて多数の学生が米国大使館周辺を取り囲み、 昼過ぎには2万人以上に膨れ上がった。学生らは「米国の覇権主義打倒」「血は 血で償え」などのプラカードを持って当局の指示ルートに沿ってデモ行進した。
また、米国総領事館のある上海市や広東省広州市でも1万人を超える大学生が 8日を上回る規模のデモ行進を続け、全国各地の主要都市にも抗議行動が広がっ た。
政府は9日、特別機で遺族や医療関係者を現地に向かわせ、遺体や負傷者を帰 国させる予定で、外交関係者の間からは「遺体を北京に迎える時が抗議活動のピ ークになるだろう」との見方が出ている。
10日の共同通信社の報道によると、「なぜこの大事なときに江沢民国家主席 と朱鎔基首相は出てこない」「コソボに義勇軍を出して米帝国主義に報復を」―。 人民日報のインターネット版は10日までに、ベオグラードの中国大使館爆撃に 抗議する市民の声を電子メールで自由に述べさせ始めた。
人民日報は昨年からインターネットを使った速報サービスを強化、ユーゴ空爆 が始まってからは専門コーナーを設けたが、このほど「NATOの暴虐行為に強 く抗議」と題した電子メールによるネット論壇(会議室)を始めた。
論壇では「江、朱の二人は肝心なときに閉じこもっているべきではない」など、 事件発生後に胡錦濤国家副主席が抗議デモを支持する演説をしただけで、首脳が 姿を見せないことに憤る声を掲載。
また、「百年前の(義和団を鎮圧した)八カ国連合軍、現在のNATO軍。東 方の巨竜はいつ立ち上がるのか」「ユーゴへの軍事援助を」「まず対米断交、第 二に参戦、第三に沖縄の米軍基地をミサイルで攻撃」との、過激の声も。
一方で「理知と冷静さこそ中国の福となる。衝動と熱狂は敵に利用される」「 政府を恨んではいけない。ヤンキーの計略に引っ掛かるな」と、冷静な対応を訴 える声も少数ながら紹介した。
人民日報のホームページはhttp://www.peopledaily.com.cnである。
10日の新華社電によると、江沢民国家主席はエリツィン・ロシア大統領との 電話会談で、中国大使館爆撃について「米国を中心とする北大西洋条約機構(N ATO)はすべての責任を負うべきだ」と激しく非難した。最高指導者、江主席 の爆撃に関する発言が報道されたのは初めて。江主席は「極めて野蛮な行為は中 国の主権に対する粗暴な侵犯であり、外交史上もまれなものだ」と指摘。国連承 認を経ていないNATOのユーゴ攻撃についても「完全な砲艦政策」とし「とて も危険な傾向であり、各国政治家は警戒せざるを得ない」と批判した。
新華社の報道によると、NATOの中国大使館への攻撃について、中国の法律 学者はNATOの戦争犯罪を追究しようとする動きがある。1961年のジョネ ッブ外交公約、1991年の国連国際法委員会公約、1945年の国際軍事法廷 審判原則及び国連公約などの国際公約により、戦争中で庶民を殺し、非軍事目標 を攻撃するのは戦争罪となる。アメリカをはじめとするNATOは「人権保護」 の看板を掲げ、一主権国に対し、45日間も続く狂気にじみた爆撃を行い、それ によって、大量の庶民が死傷し、数十万の難民が故郷を逃れた。特に、ウィーン 外交関係条約と国際関係の慣例を無視し、公然と中国の駐ユーゴスラビア連邦大 使館に対し、ミサイル襲撃を行った。これは明かな戦争犯罪で、国際法廷でNA TOの戦争犯罪を追究すべきだと中国の法律学者は強く主張している。
***日本***
9日の共同通信社の報道によると、北大西洋条約機構(NATO)によるユー ゴスラビアの中国大使館爆撃で、日本国内の中国人留学生約百人が9日午後、東 京都港区の米国大使館前で「攻撃は中国の主権と尊厳を侵すものだ」などと抗議 した。爆撃後、日本の米大使館前での抗議行動は初めて。
留学生は大きな中国国旗や「大使館の同胞を返せ」などと書いたプラカードを 手に大使館前に集まり、国歌を歌ったりシュプレヒコールを上げたりした後、大 使館側に抗議文を手渡した。
東大の留学生(32)は「米国がリーダーであるNATOによる今回の空爆は、 われわれに対する悪意のある挑戦だ。留学生として、怒りを日本の皆さんにアピ ールしたい」と話した。
10日の共同通信社の報道によると、北大西洋条約機構(NATO)軍による ユーゴスラビアの首都ベオグラードの中国大使館爆撃に対し、在日中国人留学生 ら約八十人が10日、東京都港区の米国大使館前で「NATOは空爆をやめろ」 などと叫んで抗議した。抗議行動は9日に続き二回目。
留学生らは都内や埼玉、千葉など首都圏の大学から集まり、爆撃の犠牲になっ た中国人記者ら三人の顔写真や「米国、NATOを恨む 侵略反対」「大使館を 返せ 同胞を返せ」などと書いたプラカードや中国国旗を掲げながら、米国大使 館に向かい「米国を倒せ」とシュプレヒコールを繰り返した。
午後三時すぎ、留学生の代表が正門前で応対した大使館員に「中国大使館爆撃 は国際法違反であり、米国とNATOに最大級の抗議をする」などと書いた抗議 文を手渡した。
***シンガポール***
10日の共同通信社の報道によると、シンガポールの米大使館当局者によると、 中国人留学生ら約二十人が十日朝、米大使館を訪れ、北大西洋条約機構(NAT O)軍によるベオグラードの中国大使館爆撃に抗議する文書を手渡した。グルー プのうち代表四人が館内に案内され、担当者に文書を渡したという。
***香港***
9日の毎日新聞社の報道によると、NATOによる中国大使館爆破事件に抗議 するデモが香港の米国総領事館と英国総領事館前で行われた。数十人の参加者は 「対ユーゴ空爆を即時停止せよ」と抗議し、タマゴをぶつけたり、星条旗を燃や した。
***国連***
8日の朝日新聞社の報道によると、国連安全保障理事会は8日午前零時(日本 時間同日午後1時)過ぎから、北大西洋条約機構(NATO)によるベオグラー ドの中国大使館爆撃を受けて、中国の要請で緊急協議を行った。約3時間にわた る非公開協議の末、安保理は死傷者が出たことへの「衝撃と憂慮」を表明する報 道向けの声明を発表した。中国が主張したNATOに対する「非難」の言葉は削 除された。安保理はその後、未明の公開協議を開き、中国とロシア、ナミビアに 加えて、安保理に入っていないユーゴスラビアやイラク、キューバなどの反米国 家がNATO空爆を非難する演説をした。
政府外交筋は国連本部で記者団に対し、ロシアを含めた主要8カ国(G8)が 取り組むコソボ紛争の政治的解決を目指した安保理決議案への対応について、今 回の爆撃が「深刻な問題となる」と述べた。
国連筋によると、この日の安保理では最初の非公開協議で、政府が「大使館に 対するNATOの攻撃は国際法の重大な違反であり非難する。国連事務局に調査 と、NATOに説明をそれぞれ要求する」という非難の度合いが強い報道向けの 声明を提案した。これに対し、米をはじめとするNATO加盟国が「NATOの 爆撃が原因か事実を確認できておらず、調査中」として修正を求めた。声明は全 会一致でないと発表されないため、最終的に非難を弱めただけでなく、NATO のミサイルかどうかもあいまいにし、NATOの調査結果を待つとする声明で終 わった。
その後の公開協議で、秦華孫国連大使は「さらなる措置を取る権利を留保する」 との政府声明を読み上げ、爆撃をめぐるNATO側の対応によっては反発を一層 強める姿勢を示した。中国とともに最初から空爆に反発してきたロシアも、中国 大使館への爆撃を非難し、一連の空爆そのものの即時停止を主張した。
米などNATO加盟国は犠牲者に哀悼の意を表したが、空爆を続ける原因は、 コソボのアルバニア系住民を弾圧するユーゴのミロシェビッチ大統領にあるとの 立場を繰り返した。
安保理以外から参加したユーゴとベラルーシ、イラク、キューバはいずれも中 国の主張を支持し、米を非難した。
***NATO***
9日の朝日新聞社の報道によると、北大西洋条約機構(NATO)は8日、ベ オグラードの中国大使館被弾事故はNATO機の目標誤認による攻撃だった、と 発表した。急きょ記者会見したソラナ事務総長は「悲劇的な過ちであり、被害に 遭われた方々とご家族、中国政府に深くおわびする」と、これまでの爆撃にない 最大級の表現で謝罪した。一方で、ユーゴスラビア当局が国際社会の要求に従う まで空爆を続ける考えも表明した。また「この事故で外交努力の勢いを弱めては ならない」と強調した。米国防総省のベーコン報道官も同日の記者会見で「遺憾 の意」を表明した。
NATOによると、本来の攻撃目標はユーゴ連邦兵器調達庁だったが、攻撃に 参加した戦闘機の操縦士は、中国大使館の建物を調達庁が入居するビルと思い込 んで撃ったという。攻撃には、目標まで誘導するタイプの兵器が使われた。ただ、 記者会見で事故の説明にあたった軍の広報担当者は「NATOは中国大使館の位 置は知っている」とも述べるなど、「とんでもない事故」(シェイ報道官)をめ ぐる説明は混乱した。
7日深夜から8日未明にかけてのベオグラード空爆は、これまでで最大規模と なった。NATOによると、攻撃目標は爆撃につながった兵器調達庁のほか、ミ ロシェビッチ大統領の別荘地下にある司令施設、民兵組織の指導者が司令部に使 っているホテル、国防省ビルや軍、治安警察の本部など。この中で中国大使館に 最も近いのはホテルで、NATOは調達庁の場所を明示しなかった。
9日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、北大西洋条約機構(NATO)によ る在ベオグラード中国大使館への爆撃は、大使館をユーゴの武器庫と間違えたも ので、ベオグラードの古い地図を使って作戦を立てたことが原因だった可能性が あると報じた。
同紙がNATO当局者の話として伝えたところでは、出撃した航空機は命じら れた目標を正確に攻撃したが、その目標自体が誤ったものだった。この攻撃目標 を選んだのは米中央情報局(CIA)。現在、爆撃の原因調査が進められている が、CIAはベオグラードの古い地図を使って、今は中国大使館がある場所を武 器庫と思い込んで攻撃目標にした可能性があるという。
9日付の米紙ワシントン・ポストは、北大西洋条約機構(NATO)軍の過去 44日間のユーゴスラビア空爆で、爆撃事件は中国大使館やブルガリアへの着弾 を含め、計24回に上ったと報じた。特に、4月に広範な空爆目標の選定権限が NATO軍司令部にゆだねられて以降は、誤爆によって少なくとも150人の民 間人が死亡、家屋数百棟が破壊されたという。
9日の時事通信社の報道によると、北大西洋条約機構(NATO)軍のシェイ 報道官は9日、「ユーゴスラビア・コソボ紛争の政治解決に向け中国の協力を期 待する」と述べ、NATO軍機による在ベオグラード中国大使館爆撃後の早期の 関係修復を訴えた。
同報道官はまた、「中国がNATOの謝罪を受け入れ、今回の件が単純な事故 だったと認めるよう望む」と強調した。
その一方、8日も引き続き空軍基地や橋、テレビ中継施設のほか、コソボ内に 展開するセルビア治安部隊の前線本部などを攻撃したことを明らかにした。悪天 候により出撃回数は最近の水準を下回ったものの、「ユーゴ軍の作戦遂行能力や 交信能力をさらに低下させることに成功した」という。
***ロシア***
8日のインターファクス通信によると、ロシアのイワノフ外相は8日、中国大 使館爆撃を受け、唐家セン外相と電話会談、NATO軍のユーゴ空爆の即時停止 とコソボ問題の政治的手段による解決が必要との認識で一致した。
10日の新華社電によると、江沢民国家主席とエリツィン露大統領は10日昼、 ホットラインを通じて電話会談を行い、NATOのユーゴ空爆停止がコソボ問題 解決の前提条件になるとの認識で一致した。同通信によると、エリツィン大統領 はNATO軍による中国大使館爆撃について、「ロシアの立場は中国と同じだ」 と述べてNATOを非難した。
江主席は大使館爆撃を「野蛮な行為だ」と批判し、ユーゴ空爆についても「国 連を回避した主権国家への攻撃は典型的な砲艦外交だ」と指摘した。さらに「中 露は国連安保理常任理事国として世界の平和と正義の維持に重大な責任を持って いる」と国連での共同歩調を呼びかけ、「空爆の停止がコソボ問題解決の必要条 件だ」と語った。
中露首脳が大使館爆撃事件で意見交換したのは初めて。新華社によると、エリ ツィン大統領が江主席に電話をかけた。
10日の毎日新聞社の報道によると、ロシアのチェルノムイルジン大統領特使 (元首相)が10日午前10時40分(日本時間同午後3時40分)、ユーゴス ラビア情勢などについて話し合うため、北京に向けて出発した。江沢民国家主席 らと会談する予定という。ロシアはこれまで、NATOに対してユーゴ空爆の即 時停止を求めており、NATO軍の中国大使館(在ベオグラード)誤爆に反発す る中国と歩調を合わせ、調停作業をさらに活発化させるものとみられる。
特使派遣は、エリツィン大統領がこの日朝、江主席と電話で協議して決めた。 同特使は先に北京入りしていたプリホジコ国際問題担当大統領補佐官に代わり、 コソボ紛争の政治的解決を目指して協議を続ける。特使はドイツでシュレーダー 首相とユーゴ問題を協議し、9日にユーゴ行きの予定を変更してモスクワに戻っ たばかり。今週初めにモスクワでタルボット米国務副長官と会談する予定だった。
ボンで開かれた主要8カ国外相会議では、ロシアはNATO諸国との間で7項 目和平で合意した。しかし先送りされた問題も多く、両者間の意見の開きは依然 として大きい。このためロシアとしては、和平合意案の実質審議に入る前に中国 と意見をすり合わせ、NATOに対して空爆の停止を重ねて要求することになり そうだ。
***アメリカ***
9日の毎日新聞社の報道によると、クリントン米大統領は8日、北大西洋条約 機構(NATO)軍による在ユーゴスラビア中国大使館爆撃に遺憾の意を表明す る一方、ユーゴ空爆を継続する方針を確認した。オクラホマ州の竜巻被害を視察 した大統領は記者団に対し、爆撃を「悲劇的な誤り」と表現、中国政府と国民に 「遺憾と追悼の意」を表明した。
米紙ワシントン・ポストは10日、ベオグラードの中国大使館を爆撃したのは 米軍が今回初めて実戦投入したB2ステルス爆撃機であると報じた。また米中央 情報局(CIA)は、中国大使館が建築される前の古い地図を基に、誤った標的 情報を国防総省に提供したという。
B2は天候や地形にほとんど左右されない衛星誘導型の二千ポンド爆弾を十六 発装着でき、レーダーに捕そくされずに多数の目標を爆撃できる。米内陸部のミ ズーリ州から二機が出撃を続けていた。
同紙によると、CIAが同じ通りにあるユーゴ軍関連機関と間違えて標的を特 定した。地上の米情報員に照会されず、米統合参謀本部、米欧州軍、NATO軍 も新しい地図をチェックしなかったという。
10日の共同通信社の報道によると、北京の米大使館は十日までに、ベオグラ ードの中国大使館爆撃に抗議するデモ隊が乱入する事態に備え、機密書類の廃棄 を開始した。サッサー駐中国米大使が十日、ロイター通信との会見で機密書類の 「保護措置」を取っていることを明らかにしたもので、同通信によると通常取ら れる保護措置は、文書の細断・焼却、コンピューターファイルの消去だという。
中国警察当局は同日、米、英両大使館周辺に検問所を設けてデモを規制してい るが、サッサー大使は会見で、身辺の安全が保証されないため、大使館外に出ら れないと語った。北京の外国人学校、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の大 使館は同日、閉鎖された。
***ユーゴ***
9日の毎日新聞社の報道によると、北大西洋条約機構(NATO)軍による中 国大使館の爆撃事件でユーゴスラビア連邦政府は8日、爆撃を「意図的なもの」 と改めて批判、国連安保理が空爆の即時停止を決議するよう求める声明を発表し た。
声明は大使館爆撃を「前例のない残虐な犯罪行為で、国連憲章、国際法違反だ」 と批判。さらに「国連憲章を尊重する中国への攻撃でもある」として、侵略行為 (空爆)停止を求めた。
一方、当地の報道機関によると、NATO軍は8日から9日にかけ、ウジツェ などユーゴ中部の2都市で初めて電話局を攻撃、ウジツェでは局が倒壊し、一部 地域で電話が不通になっている。
***日本***
9日の朝日新聞社の報道によると、高村正彦外相は9日午前、テレビ朝日の報 道番組で、北大西洋条約機構(NATO)軍による在ユーゴスラビア中国大使館 の爆撃に関連、日本政府として8日までにNATOおよび米、英両国に対し、ベ オグラード市内の各国大使館密集地域への空爆を避けるよう申し入れたことを明 らかにした。
また、外相は相次ぐ誤爆について「(NATOは)自らのピンポイント(爆撃) の能力を過信した」としながらも、「(ユーゴ政府が)民族浄化をさらに行うフ リーハンドを与えない形で、空爆をやめなければならない」と述べ、直ちに空爆 を停止することは困難との見解を表明した。
一方、主要8カ国(G8)緊急外相会議の7項目合意に盛り込まれたコソボへ の文民・治安部隊の展開については「日本が働きやすい条件で、平和的なことで あれば、率先してやる意思がある」と述べ、人的貢献の可能性を探っていく考え を示した。
***ベトナム***
9日の英字紙ベトナム・ニューズによると、ベオグラードの中国大使館爆撃事 件についてベトナム外務省が声明を発表し、北大西洋条約機構(NATO)の爆 撃は「国際法に違反する」と強く非難した。声明はまた、コソボ問題は平和的手 段で解決されるべきで、軍事行動は直ちに停止すべきだと主張した。