第220号

  1998年(平成10年)10月16日発行  1994年(平成6年)11月 1日創刊


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専題特集●中日関係の実像を求めて(上)


  【編集前記】 8月28日の深夜、朝日テレビの「朝まで生テレビ」で
  は、「日中市民大討論・日中関係の未来」という題で、中日の関係者が
  それぞれ6人から参加する討論番組を生放送した。番組の中でも強調さ
  れているように、中日の関係者が両国間に存在する主な問題についてオ
  ンエアで直接に論議を交わすことは、今までになかったことである。C
  OM編集部は、番組の録画の一部を記録して二回に分けて紹介する。な
  お、掲載する内容は、COM編集部の責任で記録、整理したもので、本
  人たちの確認は得ていない。



           中日関係の実像を求めて(上)
      ──朝まで生テレビ「日中市民大討論」の内容紹介

司 会 田原総一朗

  パネリスト:

劉 徳有 中国文化部元次官、中国国際文化交流協会会長
     (中華日本学会会長、1964年から14年間特派員として日本駐在)
陸 国忠 中国国際問題研究所高級研究員
     (駐日中国大使館員として8年間勤務)
林 国本 中日友好協会理事
     (1986年から7年間北京週報の特派員として駐日)
張 云方 中国全国日本経済学会副会長
     (1975年から5年間人民日報の特派員として駐日)
高 海寛 中国国際友好連絡会副秘書長、平和と発展研究センター主任
     (1985年から駐日大使館員として4年間勤務)
楊  晶 中国青年国際人材交流センター対外連絡部長
     (東京大学に2年間留学)

衛藤瀋吉 東洋英和女学院、東京大学名誉教授
     (専門:中国近代史)
小島朋之 慶応義塾大学総合政策学部教授
     (専門:現代中国の政治、外交)
高野 孟 「インサイダー」編集長
田畑光永 神奈川大学教授,元TBS
     (北京特派員経験)
戸張東夫 産業能率大学教授
     (専門:現代中国政治、新聞記者として10年香港特派員)
蓮  舫 キャスター、女優
     (父親中国人、母親日本人、北京大学語学留学経験)

傍  聴 中国人留学生30人、日本人学生30人



・傍聴席の発言者名は、中1、中2……、日1、日2……で示す。
・()内の内容は文脈上の補足及び討論場面についての補記
・〈〉内の内容は編集注記


田原:今晩は、田原総一郎です。実は、こういう日中の論客、市民が集まって討
   論したいのは、昨年の11月に、実は、私は中国へ参りまして、その時に
   中国の皆さんと話した時に是非そういう機会があれば、われわれも出たい
   、という話しが盛り上がりまして、約1年かかりまして、やっと実現しま
   した。多分日本のテレビでこういう中国の方と日本人が論争するというか
   、討論するのは初めてではないかと思います。どこまで一体本音の討論が
   できるのか、私も、実は、どきどきしています。では、さっそく始めたい
   と思うんですが、その前に、まず、日本側と中国側のそれぞれの方に、い
   ま日中関係で何が一番問題なのか、何が問題なのか。問題提起をして頂い
   て、それをきっかけに討論に入りたいと思います。

衛藤:尖閣列島〈中国名:釣魚島〉問題とか、或いは核実験問題とか、短期的に
   は随分いろいろ細かい問題がございますが、私は長期的根本的な問題は中
   国が巨象の様なもので、日本人は目が悪い人で、どうしてもその一部分し
   か分からない。私も40年中国を勉強して参りましたが、やはり分からな
   い。その分からないことを認識するということが、私は一番大事だろうと
   思っております。例えば、今を時めく閣僚になっている学者がかつて世界
   学長会議でこういうことを言ったんですね。私が「どうも日本の大学はア
   ジア研究に力を注がなくて困る。特に、自然学者はアジアに関心を持たな
   い」、ということを言いましたら、その方が非常に怒られまして、「もう
   今の言葉を聞き捨てならんと、私もちゃんと北京に二週間行ってきた」と
   。講義に行かれたらしいですが、それで、アジアに関心を持っているとい
   うふうに自負している。そういうところに問題がある、というふうに考え
   ております。だから、確かに貿易だけ見ればこの25年間で60倍になっ
   た。しかし、その背後にある、日中関係の近くて遠いという、近いところ
   もあるし、遠いところもある。それを謙虚に理解することが、私は、日中
   問題の長期的には最大な問題だと思っております。

劉 :衛藤先生の方から、中日間の今後の大きな問題として相互理解を深める必
   要あるということを強調されまして、私もまったく同感でございます。私
   は、今後の課題として一つ申し上げたいのは中日友好の事業はもう世代交
   代の時期に入っている、というふうに見ております。そういう関係でやは
   り正しい歴史観で両国の青少年を教育して、そして、中日友好事業の後継
   者の育成にも力を入れることが重要ではないかと、そういうふうに考えま
   す。そこで、思い出したけれども、中国でも日本でもかつて青年の間で与
   論調査をしたことがございます。与論調査というのはそれを実行した時々
   のいろんな条件等に左右されるわけですけれども、ある程度実状を反映し
   ている、と私は見ております。1996年、中国で青年の間で与論調査を
   行いました。しかし、ちょうどそのごろ中日関係の間に、今衛藤先生の方
   から出されたようないくつか敏感な問題は起ったんですね。その中で行わ
   れたもんですから、その結果14.5%の中国青年が日本に対して全体的
   にいい印象をもっていないというような結果になりました。そして、95
   .8%の者は両国の友好関係はやっぱり中国とアジアにとって極めて重要
   である、という答えをしております。それから55%の者が、中日の世世
   代々の友好というものは主として両国の若い者が如何に交流と理解を深め
   るか、そのことにかかっているという答えをしております。一方日本側の
   方はがどうか言いますかと、私は詳しくは存じあげませんけれども、日本
   の方の対中国の感情、いろいろ、まちまちでございまして、おおまかに言
   えば、大人の方のほうは中国と何等かの関係がある方が多くでございまし
   て、何等かの形で親近感を持っている。しかし、それに引き替え、青年の
   方々は中国とのつながりが割合に少ない。そこで誤解もあるんじゃないか
   と。従って、いろんなパーセンテージにそれが現れている、と言うことが
   あるわけです。しかし、最近の日本の与論調査を見ますと、中国に対して
   好感を持っている、という答える方が若干増えている様にと思っておりま
   す。簡単に申しあげますと、中日の関係は他の国と違う特殊性があると思
   うんです。それは両国の間には二千年にわたる友好交流の歴史があるだけ
   でなくて、日本軍国主義者がかつて中国を侵略した百年あまりの不愉快な
   歴史もあったということなんですね。今、戦後が50年以上経って新しい
   世代が成長しております。そして、そういう世代はいま両国でそれぞれ5
   0%以上占めるようになりました。その人達は若い世代は戦争を知りませ
   ん。中日関係が辿ってきた曲折した過程というものを身をもって体験して
   おられないわけですね。したがって、私達はやはりそういう若い人たちに
   真実を教える必要があるんじゃないか、というふうに思います。もう一言
   を申し上げますと、中日友好の中で一番大事なのはやはり人間関係を作る
   ことだと思います。それで、若い人達の交流の強化を通じて若い世代の間
   に沢山の友人関係ができることを私は心から願っております。

(拍手)

田原:日中関係というのは私は友好、本当に近い国だし、深めて行かなきゃいけ
   ないと思っているですが。去年、毎日新聞が行った日中文化交流シンポジ
   ウムで、劉さんもお出になっていますね。それから蓮舫さんも出ているん
   ですが。そこで、天児慧さん、これは青山学院の先生、こんなことをおっ
   しゃっているんです。80年代には日本人で中国に対して親近感を持つと
   いう人達が7割をキープしていると。ところが、最近は親近感を持つとい
   う人が5割を割って、もたないという人間はむしろ5割以上になってきた
   と、逆転したわけですね。70年代、80年代は、日中関係は、日本人か
   ら見て大変親近感をもった、いま、親近感を持たない人は多くなっちゃっ
   たと、これは一体どう言うことなのか、と言う問題。一方中国の方はどう
   かといいますと、これも、中国の世論調査で日本へ親しみを持てるという
   人が、信頼できるという人が14%か15%しかいない。親しい持ってい
   る人が14%で、信頼できる人が15%しかないと。中国の側も日本の側
   もだんだん最近になってきて、親近感、親しみを持てない人が増えてきた
   と。こりゃ一体どう言うことなのか。

戸張:去年の場合はですね、一つ核実験といったようなことがありましたから、
   そういう世論調査、さっき劉先生もちょっとご指摘なさいましたけれども
   、世論調査というのはその調査をする時期によって非常に変わるんですね
   。そういうことが去年の調査には一つあると思うんですね。日本の中で、
   靖国参拝の問題とかですね、そういうような問題、それから、日本に閣僚
   の度重なる中国側に批判されるような発言、そういうものがあって出て来
   たんじゃないかと思うんですね。僕は去年上海へ行ったんですけれども、
   その時に、本屋さんで非常に日本を取り上げた本が多いのでびっくりした
   ですけどね。批判はあっても、興味は非常に持つようになってる。日本に
   対して関心が深まれば深まるほど、改めてこれまで知らなかった部分に対
   して不満や新たな関心が生まれて来る、そういうことがあると思うんです
   ね。確かに去年から、その前ですよ、「ノーといえる中国」というような
   本は中国で出て、日本に対して非常に厳しい批判が出てきた。そういう新
   に日中関係が深まれば新にそういう不満も出てくる、そういうことがある
   んじゃないんですか。ですから、その世論調査の結果が悪いから、全部悪
   くなった、そういうふうに単純に言えないと思うんですね。

小島:議論はやはりきちんとした正確な事実を基づいてやらないとだめですね。
   いまの中国側の日本に対するに認識・イメージ、恐らくそれは「中国青年
   報」という新聞の世論調査の結果だろうと思います。それは昨年ですね。
   もう少しそれを詳しく見ていくと確かに日本に対してよろしくない。そう
   いう答えが先ほど出てきたような数字でありますけれども、他方もう一つ
   注意しておかなければいけないのは、これは中国の青年達のかなりの部分
   というのが日中関係についてどう思うかと、日本についてどう思うかとい
   うと、それはいいというイメージを持っていないけれども、悪いというイ
   メージも持っていない、普通だと、普通の関係だと、これが圧倒的な多数
   の答えなんわけですね。この部分はきちんと見ておかなければいけないこ
   とが一つ。それから、日本側の世論調査の結果というのは、これは総理府
   の外交に関する世論調査ですね、これも傾向としておっしゃる通りなんで
   すね。80年代全般の70%近くの高い数字を日本の国民が中国について
   良好のイメージを持っている。日中関係の現状について高い評価をしてい
   る。これは7〜80%ですね。それが下がっていることが確かです。一つ
   は1989年の天安門事件、それから、二つの目には1992年のちょう
   ど国交正常化20周年、その時の天皇皇后の訪中、そこで一度盛り返す。
   ところが、その以後また下がっていくわけですね。これが1995年、9
   6年の中国の核実験。それから、日中戦争の50周年、こういうのが重な
   る。さらに付き加えれば、台湾の李登輝総統の訪米と、こういうのが重な
   ることで極端に悪くなる。これはその通り。そこでいいというイメージと
   悪いとうイメージ、よくない関係と悪くない関係というのが逆転します。
   しかし、これもちょっとやはりきちんとフォローしておかなければいけな
   いのは昨年の調査、一昨年の96年、97年の調査では、それはまた逆転
   は徐々にではあるけれども、また昔に戻りつつあるわけですね。つまり、
   まだまだ中国に対する、日本国民のイメージがよろしくない、これがまだ
   上をいってますけれども、これからもう一度逆転するかな、そういう傾向
   を示しているところもやっぱり見ておかなければいけない。したがって、
   全体として70年代、80年代全般の非常に好ましいという日本国民の中
   国に対するイメージが下がってきてることが確かである。しかし、その中
   でもまたもう一度先ほどの衛藤先生の話しでいるところの、相互理解とい
   うのがまた少しずつ上がってきている、という両面をやはり見ておかなけ
   ればいけないと思いますね。

陸 :先、日中関係の与論調査で色々とお互いに誤解があって、その中で一つは
   与論はどういうふうに両国の情況を正しく報道するか。そこが問題ですね
   。例えば、先おしゃったように核実験問題は、日本では非常に問題になっ
   て、中国でも非常に色々と問題になっている。というのは中国は核実験は
   今まで44回だけ行なって、日本は非常に物凄い反応があって、しかし、
   アメリカの方は2千数百、2千以上の核実験を行った。しかし、日本は全
   然あまり反応がなかったんです。どうして中国に向けて大きな反応するか
   。逆にそれを聞いて、中国も反感をもっている。どうして中国に向けてい
   るかね。もし日本は一貫して反対したらば理解できる。どうして中国にだ
   け向けているか。その点があるから、中国の青年もね、日本のやり方が可
   笑しい、という考えるをもっているじゃないかと思いますね。

衛藤:それはやっぱり、長期的に中国に対する理解がアメリカに対する理解と非
   常に違うということだと思います。どう違うかと言えば、アメリカは、日
   米安保条約もあり、それから核開発の先進国であり、そこがやるのは仕方
   がない。一応形式上の抗議は長崎市も、広島市も、外務省もするけれども
   、それ以上は出ない。しかし、非常に親しいはずの中国が、核兵器の開発
   をやることは、日本にとっては大変神経を苛立たせることだと思います。
   イメージは違うのですね。

高野:日本のアメリカに対する態度というものが、ずっと戦争に負けて以来、そ
   して冷戦が終わったあとは、そこは一つの脱却するチャンスだったんだけ
   れども、そこでも変わらないで、ずっと親米一本と、これは日本人全体と
   は思いませんけど、特に政府・外務省の態度というのは一貫しているわけ
   ですよね。そこで、日本の外交というものはものすごく手詰まりになって
   しまう、ということがいろんな面で起こっているのではないですか?中国
   との関係も、アメリカは中国を21世紀の戦略的パートナーと位置付けて
   、そこで積極的展開しながら、その米中という軸に対して日本をどう位置
   付けるかということを考えているわけですね。日本の方はまだ昔の考え方
   のままですから、アメリカについて行けば大丈夫だと思っているのですね
   。そういう日本は中国から見ると、多少軽蔑な対象に……それをどこから
   ほぐしていくかというと、日本が、自分の考えをきちんと持ってアメリカ
   に対していうことを言う、中国に対してもいうことをいう、というふうに
   なっていきませんと、てんで話にならないじゃないかという感じを僕が持
   っていますけどね。

田原:田畑さん、日本人がアメリカに対して言うことを言う日が来るのでしょう
   か。

田畑:どうでしょう。まだ見えないけど、でも先からの話で、明治維新から今年
   でちょうど130年でしょう。日中平和友好条約20年。ざっと見ればそ
   の前の110年間は、日本と中国の歴史は、劉さんの2000年の友好は
   別にして、130年間だけを見れば110年間はどちらかといえば非常に
   ギクシャクして対立していた時代ですが……20年間は非常にハッピな時
   代ですよ。それで、その20年前から日本はずっと戦後50年間はアメリ
   カに従ってきましたから、そう簡単には変わらない。これから変わるかど
   うかは分からないけど。だけど全体的に見ればこの20年間は、戦争もな
   いし自由に密航もできるし……自由にはできないけど、皆どんどん留学生
   もたくさん来るし、こんないい時代はなかった。世論調査が良くなったり
   悪くなったりするのはそんなに気にしなくていいと、私は思っていますけ
   どね。

林 :僕自身はですね、やっぱり中国人の発想として、物事の主な流れを見るべ
   きだと思います。やはり中日両国の関係というのは主な流れの面では段々
   と良くなっているし、これからも良くなると思います。いくらいろんな調
   査があったとしても、また個々の問題が起こったとしても、この流れは変
   わらないと思います。僕自身、天皇皇后両陛下が中国を訪問された時に、
   取材に参加させていただきまして、勿論釣魚台とかいろんなところで他の
   同僚たちと一緒に取材したのですが、その時僕は非常に楽天的になって、
   これで中日の問題は一区切りついたと、非常に安心したわけですね。そし
   て、中国の外務省も、僕の感じとしては非常に気を使って、万が一のこと
   があっては中日の関係に響くと。だから、ものすごく大切に扱うという姿
   勢が僕には感じられました。そういうことでわれわれの取材の中でも、決
   して失礼なことがあってはいけないと。こういうことはほかの大統領が来
   たりしてもなかったのです。それだけ国民感情は、やはり今の天皇陛下は
   終戦当時は10才だったわけですね。少年ですね。中国人の発想では、少
   年は、昔のことに責任はないわけです。ただ、一国のそういう立場上、意
   志表示は必要でしょう、と思っていたわけですが、その後、いろんな波風
   が起こってきたのです。その波風も日本側から来るわけですね。それで中
   国人の一部はうんざりしたわけです。

田原:どういう波風なんですか。

林 :閣僚の発言とかですね。これでもか、これでもかと続くわけですね。それ
   で特にかちんときたのはですね、無償援助を中止するとか。これは中国人
   のイメージの中では何に結びつくかと言いますと、旧ソ連の中国に対する
   仕打ちと結びつくわけです。中国がちょっとした君たち(旧ソ連)の賛成
   できないことでもしたら、全部ストップすると。そんな金なんかいらんと
   いう国民感情が出てくるわけですね。だから、われわれのような日本関係
   の仕事をしている人間は、案外いろんなことを勉強していますので、かな
   り冷静でしたが、しかし自分が勤務している新聞社の中でも、別の分野で
   仕事をしている連中は、やはり日本という民族性ですね、非常に理解でき
   ないと、一層のこと反面教師としておいておいた方が良いと、ああいう相
   手とあまり議論する必要がないと、というような発言まで出てくるわけで
   すね。うんざりしたわけですよ。両陛下がわざわざ来て、中国の国民も非
   常に良い印象を持ったと、特に、科学院に行かれたんですね、古代の脊椎
   関係なんかを研究されたのですね、僕の友人なんかは、人柄としても非常
   に立派な方だなあという印象だったわけですね。そういう成果があるのに
   、勝手にいろんなことを放言する、暴言を吐くということは、これはよく
   ないですね。これはやっぱり、日本はやっぱりエコノミック・アニマルで
   、経済がものすごく進んでいますが、政治は三流だというと失礼ですが、
   差別発言になりますので、でも政治は1.5流くらいですかね。そういう
   ように感じます。もう少し大人になったら……

戸張:耳は痛いですけど。僕自身も反対できないような印象も持っているのです
   ね。例えば、今林先生がおっしゃったような、閣僚の度重なる中国に批判
   されるような発言、なぜああいうことをするかといつも僕たちも思うので
   すね。中国の人たちは必ず日本の閣僚が、例えば慰安婦の問題だとか、そ
   ういう問題、中国を刺激するような発言をする。なぜそうなるかというと
   、僕はやはり自覚が足りないですね。例えば日中共同声明とかですね。そ
   ういうところではそういうものをきちんと反省するようなものが入ってい
   るですから、そういうことを十分に理解しない、或いは、宣言とか友好条
   約とかいうものの重みというものを、理解していないじゃないかと。例え
   ば僕たち、一般の人たちがそういうことをするのは、僕はかまわないと思
   うのですね。しかし閣僚とか、日本政府の代表がそういうことを繰り返し
   に言うのは、僕は林先生のおっしゃるようにやっぱりおかしいではないか
   と。日本国内でもこういう意見は少なくないと思いますね。

田原:蓮舫さんはどうですか。日本の大臣が中国に対していろんな発言をします
   ね。これはどう思う。

蓮舫:それは恥ずかしいの一言につきると思いますね。

田原:僕は違うんだと思うけど。

蓮舫:どうして。

田原:司会者がこんなことをいうのがよくないけど、僕は違うと思う。何が違う
   というと、日本の政府が、或いは天皇が中国に対して謝り過ぎだと思って
   いる。あまりにもものを言わない。本来ならばきちんというべきことを言
   わなくてただ頭を下げて謝れば良いと思っている。それに対する反動です
   よ。日本の多くの人が中国に対して仲良くしなければならないと思ってい
   るけれども、日本の政府のやり方に対してはちょっと腰抜けだと。中国だ
   ってきちんとものを言うのだから、日本もきちんとものを言うべきだと。
   それがあまりたまって、その反動が出るのですよ。僕は今日の討論会はも
   っと本音の話をしたい。日本人がどうもね、僕は戦前の日本人は中国人に
   対して威張り過ぎたと思うけども、戦後の日本人は中国人に対してへりく
   だり過ぎだと思っているのですよ。今はへりくだるどころじゃない、ぺち
   ゃんこでね。今に、中国はアメリカと仲良くしちゃって……

田畑:何を言うべきなの、中国に。

田原:お詫びなんか一回でいいもので、何度も何度も言う必要はないのですよ。
   中国の核実験だって、やはりもっとちゃんと言えばいいですよ。それから
   、文化大革命だって、文化大革命は今になったら良くないとみんな言って
   いるけど、中国の人たちも。しかしあの時、日本の新聞は、殆どは良いと
   言っていた。あれに対してノーと言った新聞はいくらもないですよ。つま
   り中国にべたべたし過ぎるなの、はっきり言えば。

衛藤:核兵器について申し上げますと、私は広島の被爆者です。だから、アメリ
   カに対して非常に感情的な憎しみを持っておりました。しかし、その後、
   国際関係を勉強して、アメリカに行ってアメリカの民主制というものを実
   感して、そして、アメリカは敵がなくなれば、自ら予算をたくさん食う核
   兵器の軍備拡張をやめると、いう確信を持った。従って私はアメリカに対
   する非常な憎しみも段々ほどけてくると同時に、アメリカが圧倒的な核兵
   器を持つことは、世界平和のため、日米の友好のため、害にならないと思
   った。ただ病理学的な問題は別ですよ。政治的な面でいうならば害になら
   ない判断を致しました。だから、私は親米主義者として、文革時代には非
   常に中国の方から批判されました。しかし、果たしてその通りであって、
   ご覧なさい、予算上の問題があるから、核軍拡はアメリカはもうやめ出し
   た。そこで、中国の場合は私は、核拡散は人類のためよくないと思ったか
   ら必要はないじゃないか、という考え方を持っております。自衛のためだ
   とおっしゃいますけど、アメリカは中国を核兵器で攻撃する意図はありま
   せん。核戦争を最も好まないのは核戦争の恐ろしさを知っている政治家た
   ちであります。だから、モスクワはかつて、中国の核実験の基地を攻撃す
   ることを考えました。しかし、もちろん実行しませんでした。従ってわれ
   われは、少なくとも私は、中国は核兵器がいらないじゃないかと、こう思
   っております。同じようにインドもいらないじゃないか、パキスタンもい
   らないじゃないか、核不拡散でいけば。アメリカもイギリスも予算的な苦
   しさから軍備拡張は止めていく、政治というものはそういうものと理解し
   ております。

    これが第一点です。それから、第二点のうんざりするという林国本さん
   の(意見ですが)、あのね、日本は自由の国で、私はちっとやそっと代議
   士600人の中で、そういうのがいても、大国中国はあの馬鹿がと思って
   いればいいですよ。日本の政治を動かすことはないのです。ただ、橋本総
   理は別ですよ。総理だった時に、橋本さんが、元遺族会の会長として、随
   分中国から見れば、お気に召さない言動をとった。しかし、これに対して
   は、おたくの当時外交部次長だった唐家センさんが、直接会って言われた
   時、橋本さんは200万の英霊が亡くなっているんでねと言われた。それ
   に対して、唐家センさんは中国ではもっと死んでおりますよと言われたら
   、橋本さんが分かりましたと言って、それで了解が成り立った、という噂
   を聞いております。これ、本当か嘘か僕は知りませんよ。しかし、そうい
   う噂を私は聞いております。お互いの理解はそういうものじゃないかと、
   私はそう思っています。うんざりしないで、ああ馬鹿か、僕と違う意見言
   っていると、聞き流して下さい。総理が言った時は別ですけど、他の人の
   時はいいじゃないですか。

張 :ちょっと二点申し上げたいですが、一点目は、衛藤先生は、もし財政の余
   裕があれば核実験をやってもいいという理解をすれば宜しいのですか。

衛藤:いいえ、そういうふうに、論理を逆転させては行けない。アメリカという
   国は、税金でいろいろなものをまかなっていますから、税金を払っている
   側は常に監視の目が強い。議会は非常に強いです。上院の外交委員会はも
   のすごく強いです。だから、いくら核兵器を増やそうとしても核兵器を使
   う場所がない時には、アメリカは核兵器について無用な予算は使いません
   。というのは僕のアメリカ観です。

張 :衛藤先生(の言い方で)は、例えば中国、或いは他の国、財政の余裕がな
   いから、止めて下さいと。ちょっと誤解しやすいですよ。先ほど申し上げ
   ましたけれどもね。やっぱり、核兵器はどの国にしても、無くすべきです
   よ。通常兵器にしても、核兵器にしてもですよ。考え方は同じですよ。

田原:中国はなんで核兵器を持たなければいけないのですか。どこに対して持っ
   ているのですか。

高 :それを申し上げましたら長くなりますが、やはり冷戦時代の時ですね、中
   国は、アメリカとソ連、二つの覇権主義から包囲されて、攻撃の的になっ
   ちゃって、仕方なく、国家を生存させるために、アジアの安定のために、
   そういう力を持たないとちょっと危ないですから。

陸 :私の考えは、中国の本音はやっぱりこの核兵器は持たない方が良い。しか
   し現実としては、これはだめです。現実としてはアメリカはものすごい核
   兵器を持っているでしょう。中国は核実験をした時「中国は絶対核を持た
   ない国には核をやらない、また先にやらない」と保証してます。しかしア
   メリカは今でも先制攻撃はやめない、アメリカの核の戦略は、やはり中国
   とアメリカの間で、お互いに核を先に使わない協定を結んではどうか?ア
   メリカはこれを拒否したのです。ですから明らかに、先生はアメリカは核
   を中国に向けていないと言ってますが、恐らくそうではない。もしそうだ
   ったら、中国との間でお互いに先に核を使わないという協定を結べるでし
   ょう?しかし、今アメリカは拒絶したのです、だめなのです。ですから、
   彼らは核の優勢を保とうとしているのです、そういう状況で、中国は止む
   を得ない状態なのです。中国は核の全面的に決定的に廃絶することを主張
   しています。

田原:中国の方はもちろんご存知だと思うけど、中国が核実験をやった時に、当
   時の首相だった佐藤栄作さんがニクソンに向かって、アメリカの大統領に
   向かって、中国が核実験をするなら、日本も核兵器を持たなくてはいけな
   い、どうしょうかと相談したが、そうしたらニクソンは「まあそんなこと
   言わないで、アメリカが懸命に守ってやるから」というようなやり取りが
   あったのです。でも日本は持たなかったのですよ、いかがですか?

衛藤:まあ、中国の核兵器もかつては日本を照準にしておりましたけど、それも
   外したから、私は少しずつ事態は改善されていくと思う。国際世論という
   ものがあって、私はこれを盛り立てていこうと思っていますが、その時に
   、中国は先にやめて欲しい、印度もパキスタンも、それからイスラエルが
   何かしているんだったら、それもやめて欲しい、最後がアメリカだ。そう
   いう手順を考えてる……

(一同、笑)

劉 :私はこういうふうに考えてます。今の現実の国際政治を、という実際から
   出発しないと議論は成り立たないと思うのです。そこで考えたことは、今
   一番良いのは皆が持たない。ここにいる人が皆が持たない。そうすると絶
   対に核兵器を使うってことが有り得ないと思うのです。これは一番理想的
   だと思います。中国もそれを願っています、全廃を主張しております。一
   番いけないのは、いわゆる超大国のアメリカとソ連、かつてのソ連ですね
   、が持って、他の人は持てない。その他の人の中には中国も含まれている
   わけます。それが一番危ないと思うんです。今先生は、「中国が先にやめ
   れば良いじゃないか」というふうに言われましたけれども、陸先生が先言
   わんとしたことは、こういうことだと思うのです。つまりアメリカは、先
   制攻撃をしないということさえ言えないですね。中国は真っ先に「絶対に
   先制攻撃は掛けません、特に核のない国に対してはそういうことはしませ
   ん」ということを何度も何度も表明しております。それさえもアメリカは
   できないですよね。中国が先にやめたら、アメリカがやめるという保証は
   どこにありますか?そういう問題です。

小島:この議論はずっとこれまであるわけですね。ただ先ほど劉先生もおしゃら
   れた通り、それから衛藤先生もおっしゃられた通り、国際政治を大きく見
   ていけば、確かに今回パキスタンと印度で核実験というのがありましたで
   すね。しかしながらその全体的な核に関する状況を見ていけば、例えば東
   南アジアにおいて、「非核」こういったことがうたわれて来るようになっ
   てきてますから、私はその最終的に皆が核を持たない、そういう世界を作
   って行くためには、当然のことながら、核を持たなくても良いような状況
   を作って行くということだろうと思うのですね。それを我々が今生活して
   いる東北アジアというところで見れば、朝鮮半島もひっくるめて、日本、
   ロシア、そして中国、こういうところである種の非核条約、こういうもの
   ができるような方向で動いて行く……。

    そのためにまずは一つに信頼醸成というのを、日本、中国、そしてアメ
   リカ、アメリカというのはやっぱり引き込んでいかなければだめですね、
   ここの地域の安全保障というのは冷戦時代も、現在も、やはりアメリカと
   いうのが核になっているわけですから、そういったアメリカも引き込んだ
   ような形で話し合いを進めていく、ある種の信頼醸成措置というのを作っ
   ていく。そう言った努力を地道ですけれどもやっていくしかない、じゃな
   いですかね。今その核を廃絶すべきかすべきでないかと、こういう議論を
   すれば、それは廃絶するというのが一番良いわけですね。問題はプロセス
   ですね。これをどういうようにやっていくかというところで、日本と中国
   とで今我々は議論をして、それを詰めていくということなんじゃないです
   かね。

田畑:核については、さっき衛藤先生がですね、「中国やめたらどうか」と言わ
   れたけど、やはり核についての議論は中国の方に分がありますよ。つまり
   日本はアメリカに言うべきなんですよ。他の国々に、どこの国によりも前
   に、日本はもう時代は変わったんだから、アメリカはやめなさいと、印度
   、パキスタンははっきり言ってどうでも良いですよ。あとから出て来た国
   は、それが5つが6つになろうと、7つになろうと、それほど大勢に影響
   がない。つまりアメリカにやめろうと言われて、アメリカが一番びっくり
   するのは日本だろうし、それはやはり日本が言わないといけない。だから
   、核兵器の問題はもう良い。

戸張:僕はこう思うんですよ。今の話しの続きですけどね。まあ今度のパキスタ
   ンと印度の核実験の問題なんですけども、田畑さんがおっしゃたように、
   その日本はパキスタンと印度に対して非難をする。アメリカやなんかには
   非難しなかったじゃないかと、この点はね、やはり僕は田畑さんのおっし
   ゃる通りだ思うですね。それは、5大国、核を現在持っている国は、勝手
   に持って、新たに持とうとする印度とパキスタンはいけないということで
   すから、こんな馬鹿な話しはないですね。だから日本政府はむしろアメリ
   カに言え、と今田畑さんが言ったのはそのこと何ですね。現在持っている
   やつが自分達の核は捨てないで、これから持つやつを持つなというのがお
   かしい。それに僕はもう一つ、今の田畑さんの意見にもう一つ付け加えた
   いのは、この時に、中国がやっぱりアメリカと同じように、核を持ってい
   る国の立場を守ろうとする側に立ったのがちょっと僕残念だと思うのです
   ね。これまで、中国というのは僕らの頭の中では平和勢力の代表というよ
   うな立場にいたんですよね。それだったら核廃絶を率先して、口で言って
   ますよ、確かに、口では皆良いこと言ってますけどね、実際に捨てない。
   それはとても残念でしたね。その中国がアメリカと同じような態度取った
   と言うのは非常に残念ですね。

張 :核についてはね、もちろんね、両先生がおっしゃた通り、どの国にも持た
   ない方が良いです。それがすべてなのです。しかし、現実はそうではない
   。中国が核兵器を保有するのは二つの理由があるのです。本音を言います
   と一つは、核の独占を打破することにあるんです。もう一つは先ほどおし
   ゃったんですけれども、それはつまり自衛なんですね。攻撃ではなくて。
   もう既に自分の立場を表明しましたから、真っ先に使わない、それから核
   を持たない国に対しても使わない。それに核不拡散条約にも中国はサイン
   したわけですね。賛成しますから。問題点はようするに、アメリカですね
   、例えばただアメリカにだけ核兵器を残したら、アメリカがわがままにな
   ったらどうする?それはもっと恐ろしいものに変わるんですよ。

戸張:張先生、同じことを印度も言っているわけですよ、だからそういう言い方
   をし出したら全部が持っていいということになっちゃうわけですよ。中国
   はそういう理論でね、印度がそういうこと言ったら間違いかというと、そ
   んな理屈はないわけでしょう。だから核兵器が攻撃のためであるか自衛の
   ためであるかというような議論はね、まあ、ちょっと今は無理だと思うん
   ですね。

陸 :今はね、先生の話しでは中国は核をいらない。「核兵器をいらない」これ
   は非常に紳士的な意見だね。しかし、現実は中国がこれを捨てたら、自分
   の国をどう守るか。アメリカは今になっても中国に先制攻撃をしないとい
   う保証はしないからね。今度は、核実験の防止条約ができたのはアメリカ
   の都合で成功したのです。ですから先生さっき言ったように、中国から核
   廃絶じゃなくて、アメリカから、もしアメリカが自分から進んで、「私は
   全部いらない」と(言えば)、恐らく皆ついて行きます。今度の核実験と
   同じように。

田原:核の問題は大変難しい問題で、これたぶんやってますと、4時までやって
   も全然けりが付かないと思います。私はまず日本がやっぱり核の問題で、
   そのことを中国にも或いは印度やパキスタンに言うならば、日本がやっぱ
   りアメリカの核の傘から出なければいけない、そのことを日本が証明して
   、できれば韓国にも、或いはアジアの国々にもう核の傘から出ようと、非
   核地帯を作っていこうと、中国やめなさいよ。そうしたら大きな声で言え
   ますよね。そうしたら中国の人たちもいうことを聞かなくてはいけないで
   すね。

高野:そこだと思うんです。ようするに、日本と中国が、こっちは非核、そちら
   核を持ってるということですけれども、そこをなんとか超えていくね、何
   というか核廃絶に向かう、アメリカを説得して行く、そういうシナリオを
   持つべきだと思うんですね。

田原:だから、日本はまず、非核なんて言うのは嘘なんで、アメリカの核の傘に
   入ってるわけですから……

高野:いや、入ってると思うんですよ。ところが、アメリカが、日本人のために
   、自分が核攻撃されるリスクを犯して、例えばですよ、日本だけが、例え
   ばどこからか戦術核兵器を打ち込まれたと、いう時に、じゃそのアメリカ
   がまだ核攻撃を受けていないと、と言う状態の時にね、日本人がやられて
   、同盟国がやられて大変だからね、中国でも、ロシアでも良いですよ、そ
   のために核を打つか、打ちやしないですよ。

田原:でも高野さんね、それは危険だ、その意見を進めていくと、じゃ日本も持
   たなくちゃいけないという話しになる。

高野:だから、そこが幻想なんですよ。核の傘から外れるということは、日本を
   核武装にすることだと、いうことは、要するに国家と国家のパワー原理、
   力と力の原理によって国際政治が支配されてるんだと、いう前提があれば
   そうですよ。だからそこでそれを超えて行くシナリオは何かといったら、
   先ほどあった通りで、ようするに地域的な非核地帯にせよ、或いは信頼醸
   成にせよ、そういう、北東アジアに新しい安全保障の考え方を作り上げて
   いくことなんですよ。そのことをやっていきながら、アメリカに対して、
   核廃絶を迫ると、というシナリオが必要なんですよ。

劉 :高野さんが言われたことについてですけれども、中国に何か変わったこと
   を言って欲しかったという。そのことですけれども、中国が言いたいこと
   は、やっぱり前提があると思うんです。つまり、核の全面的廃絶ですよ。
   それが目標で、そういうことを言って。それからもう一つは、核不拡散条
   約、包括的核実験禁止条約、これにね、やっぱし無条件調印をすべきであ
   るということを言いたかったわけで、それから南アジア、アジア全体の平
   和ということを考えまして、その安定が乱されることがないようにと、い
   うことを強調してそういうふうに言ったんだと思うんです。

田原:実はね。こういう電話が、沢山きているんですよ。中国の方々に申し上げ
   たいと。靖国神社の参拝を、日本の閣僚がね、靖国神社を参拝するのを、
   非常に中国の方から、これは良くないと、批判、非難されているんですけ
   れども、一体どこが悪いんだと。あの靖国神社、つまり日本の戦争で亡く
   なった、その兵士の祭られているところへ参ったっていいんじゃないかと
   、内政干渉はやめてもらいたい、という言葉があります。

陸 :2点だけ、一つは、靖国神社には、戦死者がいますけど、一番中国が気に
   いらないのは、戦争犯罪者が入っている、祭られている。その点は、中国
   では、中国の人々の考え方と日本と違うんです。日本の皆さんは、人が死
   んだら誰でも仏さんになる、と言ってるでしょう。しかし、中国の考えは
   全く違うん。良い人だったら天に上がる、悪い人だったら地獄に落ちる。
   悪い人はあくまでも悪い人。地獄にいる。ですから悪い人を祭るのはね、
   中国はどうしても納得できない。それで、日本の政府の閣僚か何だかね、
   非常に国の責任を持ってる、そういう人たちが参るのがもっとおかしい。
   ですから、中国は、日本がいくら説明しても、なかなか一般の大衆は納得
   できない。もちろん日本の皆さんはこういう仏さまだから、そういう考え
   方でいる。しかし中国の人はね、そういう点は理解できない。

田畑:陸先生がそこまで分かってるんなら、大衆を説得して欲しいですよね。ま
   さにそうなの。日本人は死んだらね、生きていた時のことは問わないとい
   う、皆さんよく分かっていらしゃると思うんですよね。ここのところまで
   踏み込んで、その考え方を変えろと言われても、困るんですよ。だから、
   皆さんの言うこともよくわかります。日本人はA級戦犯も、それからハガ
   キ一枚で駆り出されて戦場で殺された人間も、皆一緒に祭ってる、可笑し
   な人たちだな、と思うでしょうけど、可笑しな人たちだなと思ってていい
   ですよ。つまり、外国人なんだから、どこか分からないところ、中国は箸
   を縦に置く、日本人はどうしても横に置きたい。と同じでね。あの人たち
   は分からないことをすると、もうそれでいいじゃないですか?靖国神社の
   問題でなんか日中関係がおかしくなるのは本当に不幸でね。僕は皆で靖国
   神社参拝する会と言って、これみよがしに参拝するのもちょっとおかしい
   なと思うけれども、あの閣僚が行ったとか、総理大臣が行ったとか言うこ
   とで、目くじらを立てないで貰いたい。日本人は可笑しな人たちだと思っ
   て結構ですから、これは。

田原:僕でいいますと、日本人も戦犯は戦犯だと思っているんですけど、でも戦
   犯と言うのは、つまり、死刑囚でも殺人をした人間は殺人をした人間です
   。これでも刑を執行されれば、それで終わりなんですよ。刑が執行された
   ら、そのあとは普通の人間なんですよ、だから東条さんをはじめ、戦犯だ
   と思ってますよ、私も。でも、あれは死刑がされたら、処刑されたら後は
   やっぱり普通の人なんですよ。そこを死んでも悪い奴は悪いんだと言われ
   ると、日本人には分からない……

田畑:かえて反発するのですよ。

高野:僕は違うと思うんです。あのね、それは日中戦争というものの構造につい
   ての認識だという問題ですね。それでやっぱりその日本軍国主義というも
   のがあり、それに日本国内で考えると駆り出された兵隊或いは熱狂させさ
   れた国民、これはある意味では被害者ですよ。これは日本国内ではいえば
   、皆さんの理解し易い言葉で言うなら階級関係の問題ですね。しかし駆り
   出された兵士も含めて、その日本民族全体と中国との関係、国家間或いは
   民族間の関係で言うと、その兵士たちも含めて日本人総体が加害者に立っ
   たわけですね、その二重の関係があるわけですね。

田原:いや、関係があろうと、たとえそれが戦争犯罪をやったとしても、処刑さ
   れればそれで終わりですよ。みんな死刑すればそれで終わりですよ。

高野:いや、処刑される前からそれが違うと思いますよ。そういう生と死に関す
   る基本的観念というのが勿論先ほどおっしゃったようにあると思いますけ
   れども、やっぱり僕は簡単だと思います。靖国神社はね、一面被害者一面
   加害者の日本人兵士たちだけを、或いは戦犯を含めて祭るべきではなくて
   、その中国を含めたあの戦争被害者全体を祭れば良いですよ。それに対す
   るお参りすればいいですよ。

田原:それは迷惑だと言うでしょう。中国の人たちが、靖国神社に入って下さい
   と言ったら、それは迷惑でしょう。

高野:僕は象徴的な意味で言っているのです。

田原:日本人はね、東条英機への同情もないしね。あのA級戦犯で処刑された人
   の銅像なんかはどこにもないですよ。

林 :僕自身も特派員で日本にいた時に何回か靖国神社に視察にいきました。見
   学といったらおかしいですけど、こういう議論があるから、いったいどい
   うところなのかと。それで行ってみますとあの雰囲気では、軍国主義に対
   するノスタルジー以外にないですね。戦闘帽をかぶった人たちとかね……
   。だから、あいうのはアジア、韓国を含めて或いは朝鮮民主主義人民共和
   国、マレーシヤとかを含めて、ああいうとこを見るとやっぱりあまり良い
   気持ちはしないですね。そういうことですよ。

田畑:良い気持ちしないことがわかるんですけど、ただあそこに行く人たちが、
   全部軍国主義が良かった、あの戦争が良かった、あれは正しかったと思っ
   て行く訳じゃないですから、みんな死んだ人を弔って行くことですから…
   …

林 :中国はそういうことをはっきりしてます。例えば中国の国内で、戦争犯罪
   人で中国の撫順(刑務所)とかなんか入った日本の方が大勢いますね。み
   んな無罪釈放されてそのうちのかなりの人が帰ってきて日中友好協会幹部
   になっていますよ。そうでしょう。中国人って言うのはね、そういうこと
   は根に持たないですよ。

田原:根に持たなきゃ死んじゃたらもう良いんじゃないですか。

林 :現実に本当に友好ならば、例えば日本人でもですね。皆さんこういうこと
   は知らないと思うが、北京の革命烈士を祭るお墓があるよね。八寶山とい
   うところ。これは中国の大物幹部が亡くなられて入るところですね。そこ
   にも日本人が何人か入ってるんです。こういう事は日本では考えられない
   でしょう。やっぱり中国のために昔は違った立場……

田原:ちょっと一言を言いたいですが、小島さんたちは何度でもやっていらっし
   ゃるが、意外に視聴者は初めてで、ああそうか、中国側は怒ってるのは靖
   国に戦犯が祭られているから、(それ)すら知らない人が殆どだと、実は
   。

小島:続きですけれども、陸先生がおっしゃられたように日本人が死んだらすべ
   て仏になる、この議論というのは、思い返せば1985年に中曽根総理が
   靖国神社に参拝した時に、ちゃんと中国の中からこういう議論が出ている
   わけですね。つまりA級戦犯も含めて死ねば、仏になると、これは日本の
   文化だと、ここまでは出ているわけです。これは今も出てます。問題はA
   級戦犯をそこから外せと、つまり仏にするなと、こういう注文……。まさ
   にそこですから、これは私はやっぱし、双方理解しかない、つまりお互い
   そういう文化なんだと、その文化を変えろと、もしこれ双方理解であり、
   子々孫々の歴史教育ということであるとその行きつく先は日本民族は民族
   たりうるなと、いうことになるわけですから、やはりこの部分については
   、私はさわれないなあ……

高野:いや、僕は違うと思う。要するにね、その靖国にその戦犯も祭るというの
   は、極めて政治的な決定だったわけですよ。これは日本文化と自ずからそ
   うなってることではなかったわけですよね。非常に後から政治的な意図を
   もってそういう決定が行われたのですよ。

張 :単に文化でしたら良いですけど、しかし今は、文化じゃないですよ。要す
   るに、一般の方が参拝するのは、文化的、習慣的のそれとして理解できる
   のです。問題はそこじゃないですよ。問題は高野さんがおしゃったように
   、政治的の、要するに大臣とかいらっしてね、私も特派員時代で何回もい
   きましたよ。視察じゃなくて、取材でもないです。ちょっと見に行きまし
   た。その雰囲気は本当にね、刺激ですよ。

田畑:何で言わないで下さいと言うかというと、あなたたちが言いたくなる気持
   ちもよく分かるけど、いうから、彼らが行くんですよ。何か中国や韓国や
   アジアの政府が、靖国のことにまで口を出されてたまるかと、それで俺は
   政治家としての気概を示すんだと、つまらないところで刺激してるんです
   よね。あなた方が取り上げなかったら、彼らも忙しいのにわざわざ行かな
   いですよ。これは行ったって、日本の政治には何の影響もないんです。

張 :しかし国交正常化以前もね、ちゃんとやってるんだよ。中国も何も言わな
   かったですけど。

陸 :私は日本の人から聞いた話、正しいかどうか分かりませんが、間違ったら
   、訂正して下さい。さっきからおっしゃったように、A級戦犯はね、最初
   から入ったじゃなくて、後から入ったそうです。靖国神社の規定によりま
   すと、こういう人たちが戦死者じゃないから、靖国神社に入る資格がない
   と、日本の人から教えられたの。正しいかどうかわからない。ですから5
   0何年かな、入ったのははっきりとした政治意図がある。今、中国は靖国
   神社に参拝するのは、一般の人は参拝することに反対するじゃなくて、閣
   僚達が参拝すること、これが中国の人びとが、非常にショックが受けてい
   ると、ですからこう言うことは、やっぱり中国の民族の感情を刺激するか
   ら、やっぱりやらない方が良いと……

田原:それは中国の民衆が知らなくて、中国の幹部達が政治的にそういうことを
   宣伝するから、中国の人が知っちゃってるわけですよ。これでもおかしい
   のも、ここに資料がありますけれども、中国青年報の調査によれば、日本
   人で一番知ってるのは誰かというと、一位のは東条英機なんですね。東条
   英機って60年前の人で、僕らは知りませんよ。あんなもの、興味もない
   。ところが、なぜ中国の人たちが、東条英機にこんな興味を持つのかとい
   うと、教育ですよ。それは中国が。やっぱりその日本って悪い国で、「あ
   のやろう、そんなことをしやがった」という教育をされてるからですよ。

陸 :事実は逆です。

田原:ちょっと待って下さい。せっかく日中友好討論会にしても、例えば僕は中
   国に行きました。昼間は(討論会を)やってとても良い話なんですよ。み
   んな日本のことも非常に理解されている、ホテルに帰ってきて、テレビで
   見るとみんな反日ですよ。いろいろテレビでやってるんですよ。やっぱり
   日中友好ならば、そう言うことは友好に持って行こうじゃないですか。そ
   れで教育も、マスコミも反日やっといて、こういう場で日中友好だってだ
   めなんですよ。少なくとも今日本はあの軍隊は良かったとかは……

中1:例えば、日本じゃなくて、ドイツでヒトラーとドイツの普通の兵士が同じ
   お墓に祭られてるとすると、それにドイツの人が参拝するとする、そうし
   たら、ドイツの人は別として、ユダヤの人はどう思いますか。それを聞き
   たいです。それはユダヤの人たちがそのことを許すかどうか。

田畑:だから、こういう人間の死ぬとか生きるとかについての感覚は、みな国に
   よって違うから、ドイツでヒトラーがそうしたらそれと日本で同じだろう
   と言われても困るんですよ。だから日本人はそれはおかしいと思っても、
   それは結構だといってるわけね。僕はだって中国の言ってること分かるん
   だけど、靖国神社のことをあんまり言われると全然中国のこと嫌いでも何
   でもない人までが、中国人は、仏様や死んだ人に手を合わせることまで干
   渉するのかということになるので、それを止めて下さいと言っているわけ
   です。

中1:ということは、例えばヒトラーが普通の人のように祭られていること、し
   かも一般の国民も参拝していくことは世界中で、もしそうなったら世界中
   で認められる事になるんですかね。

田畑:世界で認められるとか、認められないとかそういう問題じゃなくて、それ
   ぞれの国の人たちの気持ちの問題だから、世界の統一基準なんてないです
   、この問題は。

戸張:僕はこう思うんですよ。僕自身は、あの高野さんが考えているように、靖
   国神社に閣僚が参拝するというのは、反対してるんですね、個人的には。
   しかし、これを、外国から言われることはないじゃないかというような気
   がするんですね。だから、今田畑さんが言ったことだと思います。もし、
   これは小島先生か、そういうことまで否定するんだったら、日本民族の文
   化いらないじゃないか、こういうことになちゃいますからね!ただ問題を
   その文化的伝統の相違、文化の相違がですね、ただ単なる違いが価値観に
   なってしまうというところが、日本と中国にいろいろがあるんですね。そ
   こがやっぱり核になっていて、いろんな問題で同じことがあるんですね。
   僕がもう一回繰り返しますけれども、靖国神社に対しては、自分なりの考
   えがある。だけどよその国からとやかく言われることはないという感じが
   ありますね。

高野:さっきその日本の謝りし過ぎだと田原さんがおっしゃいましたけど、その
   謝るのはどうして言葉だけで謝って、その何度も繰り返すのかというのは
   、つまりあの日中戦争を含めてあの戦争はどういうものだったかについて
   、日本人は総括がついていないのですよ。総括がついてないその象徴がそ
   の戦犯もいっしょくたにして祭ることですよ。これは、日本の文化でも何
   でもないですよ、こんなものは。

田原:だけど日本はなんでも総括てしてないですよ、実は。日中戦争だけじゃな
   い。いい加減と言えばいい加減なんですよ。

戸張:今田原さんも言ったけど、謝り過ぎだというけどね。一回も謝らなくても
   いいんですよ。行動で示してりゃ、謝るって、口で謝ってね、その謝って
   る内容を実行しなきゃ、それは信用されないですよ。僕は何回謝ったって
   誰も信用しませんよ。それは、謝れば謝るほど馬鹿にされます。

田原:例えばね、今度小淵さんは総理大臣としては(靖国神社に)行かなかった
   ですよ。なぜ行かなかったというと、江沢民さんが来るから、ちょっと具
   合が悪いなあと言うそれだけの話ですよ。本人は悪いと思ってはしません
   よ。その程度ですよ。で、それ行かなかったら、中国は安心すると、行っ
   たらけしからん、何かおかしいな話だ。

林 :我々は日本関係の仕事に参加する時は僕の親友をも含めて、親友の親戚は
   日本人に殺されているんですね。ただし日本の方とふれ合う時には、絶対
   に個人の昔の恨み、つらみを出しちゃいけないと、中日友好ですね。日本
   の国民の大多数は良い人だと、そういうことを絶えずたたき込まれていた
   と、これは……反日教育なんか受けたことはないです。

高野:1964年に私は中国初めて行きました。その上海の郊外のある人民公社
   に行って、手のない方に会った。それは日本兵が村に来て、自分の奥さん
   も殺されて、私は手を失いました。その話ですが、私は若い時でした。大
   学生でしたから、非常にショックを受けてですね。その時その年よりの農
   民の方がにこにこしながら、いやあの戦争は日本軍国主義が起こしたこと
   です。日本国民も被害者です。中国人民はもちろん被害者です。だからこ
   ういうことは二度と起こらないように、中国の我々と日本の国民がその手
   を携えてその新しいアジアをつくることです。こういう話を聞いてきたで
   すよ。これは私も、私の人生ではある意味では決めた言葉ですね。その奥
   さんが殺され、腕も切られ、どのぐらいの感情を、先ほど衛藤先生原爆の
   話もありますように、どの位の憎しみが持つか。それは、やっぱし、おそ
   らく革命前文盲、文字も読めなかったかも知れない、そういう一農民をそ
   こまで日中戦争の構造的なことも含めて歴史も含めて、教育した中国共産
   党というのは、やっぱり私は偉大だと思いますね。私はこれは人生の中で
   ね、いくつか残る言葉があるとすると、そのいくつかの一つですね。です
   から、私は決してその中国の指導部が、反日教育してるとは決して思いま
   せん。非常に気高い精神ですね!あの戦争というのはいったい何だったの
   か。一つの構造の問題として認識させようという努力をね絶えずしたと思
   います。今もしていると思いますね。基本的ですよ。だからやっぱりそこ
   をはっきりすると、日本と中国がいったいこれから手を携えて何をしてい
   くのかということが、出発点になると思うのですね。結局、あの戦争とい
   うのは、何だったのか?このきちんとした認識を持たないでですね、日本
   と中国は何も一緒にやれないですよ。これは、その日本側の問題なんです
   よ、主として。私はそう思っていますけどね。

(会場にて、拍手)
                            (第221号が続く)

 録画記録:紀暁恵、郭桑、村木毅、林熊、許革、徐挺、朱紅兵、張路イク


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