第68号 

1996年(平成8年)1月16日発行    1994年(平成6年)11月 1日創刊

目 次●com/j1996/01b.txt next (j1996/01c) previous (j1996/01a)
新聞簡訊
中日関係●中国の橋本新首相への評価
査証問題●李元簇副総統の米国立ち寄り
香港返還●李鵬首相が英外相と会談
人権問題●魏京生氏裁判の判決文
政治関係●“官官接待”を批判
経済政策●2010年までに税収倍増を計画
中日経済●スーパーの中国進出が本格化
中日経済●全信連が上海に駐在員事務所設立へ
経済協力●中国企業にディーゼルエンジン技術供与へ
中露関係●ロシアが遼寧省に大規模原発を建設へ
社会之窓●中国の孤児院で毎年数千人死亡?
社会之窓●国産漫画で日本漫画の浸透を防ぐ試み
小説連載●ニイハオ神戸の街(1)………………………………………栗田和成
【新聞簡訊】

[1/12] 新華社などが12日伝えた中国の税関統計によると、昨年の貿易黒字は 166億9000万ドルとなり、前年比約3倍となった。中日間の貿易額(輸出 入の総額)は前年比19・9%増の574億7000万ドルに達し、これまで通 り日本が最大の貿易相手国。

[1/12] 12日の新華社電によると、中国民生銀行が12日、北京で正式にオー プンした。同行は民間企業が出資した中国の初めての商業銀行。中華全国工商業 連合会が非国有企業への融資などを目的に設立したもので、資本金は13億8千 万元(約179億円)。

[1/12] 毎日新聞などによると、江沢民国家主席は12日、政府がチベット仏教 の指導者、パンチェン・ラマ11世に認定したジャインカイン・ノルブ少年と北 京で会い、地位継承を祝福した。

[1/11] 毎日新聞によると、中国返還後の香港住民の永住権問題について、中国 外務省の陳健・報道局長は11日、「協議中の事項」と述べ、英中外相会談で完 全合意した、とする英国側の見解と食い違いを見せた。

[1/11] パリ発の新華社電によると、ミッテラン前仏大統領の葬儀参列のためパ リを訪問中の銭其シン・中国副首相兼外相は11日、ドシャレット仏外相と会談 し、その席で、李鵬首相が今年前半にフランスを訪問すると伝えた。

[1/11] 新華社電によると、中国南方航空が導入したボーイング777機が11 日、広州と北京を結ぶ路線に就航した。 中国の航空会社がボーイング777を 導入したのは初めて。南方航空は同機を保有する世界で4番目の航空会社となっ た。

[1/11] ロイター=時事によると、11日、北京で行われた競泳の短水路ワール ドカップ北京大会の女子50メートル平泳ぎで、中国の韓雪が30秒98の短水 路世界新記録を樹立した。韓雪は7日の同カップ香港大会で31秒11をマーク したばかり。

[1/11] AFP=時事によると、中国東北部の長春市は11日、2006年冬季 五輪開催地に立候補する計画を発表した。

[1/11] 11日付の香港英字紙ホンコン・スタンダードは、違法な国債取引を行 った責任を取って昨年4月に辞職した中国の最大手証券会社、万国証券の管金生 ・元総裁が上海の刑務所に拘束されており、巨額の汚職容疑で死刑判決を受ける 可能性もある、と伝えた。

[1/11] 11日付の中国各紙によると、中国人民銀行(中央銀行)はこのほど、 国務院(政府)と人民銀行の許可を受けずに宝くじを発行することを禁止、違反 すれば処罰するとの通達を公布した。

[1/11] 11日の上海証券報によると、中国国務院(内閣)の特区弁公室はこの ほど、五つの経済特区と上海市浦東開発区の企業が享受してきた自社用建設資材 の関税上の免税措置を2000年までに撤廃する方針を明らかにした。

[1/10] 10日の中国中央人民放送によると、江西省彭沢県の長江(揚子江)で 8日午後6時ごろ、堤防が決壊して民家21戸が流され、26人が死亡、3人が 行方不明となった。

[1/10] 新華社電によると、中国の銭其シン外相は10日、チュニジア、リビア、 チャド、ジブチ、セーシェルの5カ国への公式友好訪問のため北京を出発した。

[1/10] 10日の台湾紙中国時報などによると、一昨年4月に名古屋空港で墜落 事故を起こした台湾の中華航空は、昨年も台北空港やマニラ空港でオーバーラン 事故などを多発、台湾の交通部(運輸省)民航局は9日同航空に対し、1週間以 内に安全訓練計画を策定、2週間以内に実施すると同時に、減便計画を提出する よう指示する処分を下した。

[1/10] 上海で市場改革調査に取り組でいるアジア研究所の幹部は10日、ダウ ・ジョーンズ通信に対し、中国が現在15ある先物取引所の統合を計画している ことを明らかにした。幹部によると、国内先物法が現在策定されており、その中 で先物取引所を統合する環境作りがなされる可能性が強いという。

[1/9] 新中国建設の立役者の一人、周恩来元首相の死去から、ちょうど20年を 迎えた8日、人民日報は周氏をたたえる記事を掲載した。記事は「人民を愛し、 人民に利益を与えることができないなら、人民から親愛の気持ちを得ることは不 可能だ」「(党の)過去の功績を食っているだけではだめだ」と訴え、人民への 奉仕を説いている。

[1/9] ベビー用品大手のコンビは9日、中国・上海のベビー用品メーカー、好孩 子児童用品有限公司と合弁で、ベビーカーの生産会社「康貝好孩子嬰児用品有限 公司」を同国江蘇省昆山経済技術開発区に設立したと発表した。

[1/9] 共同通信によると、中国外務省スポークスマンは9日、セネガルが今月3 日に台湾との外交関係を樹立したことを理由に、セネガルとの外交関係を9日か ら停止すると発表した。

[1/8] 新華社電によると、中国国民党革命委員会名誉主席の朱学範氏が、7日、 病気のため北京で死去した。91歳。

[1/8] 新華社電によると、中国の江沢民国家主席は8日、ミャンマーの国家元首 に当たる国家法秩序回復評議会(SLORC)のタン・シュエ議長(首相兼国防 相)との会談で、両国の緊密な「兄弟関係」を確認するとともに、経済協力を拡 大する意向を表明した。また、両国は首脳会談の後、江主席とタン・シュエ議長 立ち会いの下で政府間の経済技術協力など三つの協定に調印した。

[1/8] 8日の香港紙明報によると、中国は今年1900億元の国債を発行する。 しかし、約1100億元を償還財源に当てざるをえず、純歳入は800億元程度 とみられる。高い利率で発行することで国債引き受けの円滑化を狙う財政省と金 利水準を抑制しようとする中国人民銀行の意見が分かれているという。

[1/8] 読売新聞ニュース速報によると、動植物の宝庫・中国雲南省で環境破壊が 進み、熱帯雨林が激減、気温の上昇と降雨の減少で500〜800種の植物が絶 滅寸前、焼き畑農業とゴム栽培の拡大で毎年1万6千ヘクタールの森林破壊が進 んでいる。

[1/8] 共同通信によると、中国の深セン、上海の両証券取引所関係者は8日、旧 正月の2月19日から2週間、休場する予定であることを明らかにした。3月4 日に通常の取引を再開する。

[1/6] 朝日新聞ニュース速報によると、フィリピンのラモス大統領は6日、同国 が領有権を主張する南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島周辺の海域でフィリピ ン軍にだ捕され、懲役刑の判決を受けた中国・海南省の漁船の船長4人に対し、 恩赦を与えた。4人は近く帰国する。

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【中日関係】
中国の橋本新首相への評価

 共同通信などによると、中国外務省の陳健報道局長は11日の記者会見で、橋 本龍太郎新首相について「橋本氏は中国の古い友人であり、長年、中日友好を一 貫して支持してきた」とたたえるとともに「橋本氏の任期中に中日関係がさまざ まな分野で新たな発展を遂げるよう期待しており、中国もそのために共に努力し たい」と述べ、新政権の下でも引き続き友好関係を維持したいとの中国政府の立 場を強調した。

 しかし、こうした公式発言とは別に、中国各紙には橋本氏の歴史認識やタカ派 的体質に警戒感を示すコメントも少なからず掲載されている。10日の検察日報 (最高人民検察院発行)は「橋本氏は国内闘争でも国際的な闘争でも、情け容赦 のない強硬派の人物とみられている」「民族主義者であり、毎年、靖国神社を参 拝」と指摘。同日の北京青年報も「橋本氏は日本の侵略戦争発動について否定し たことがある」と紹介した。

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【査証問題】
李元簇副総統の米国立ち寄り

 共同通信などによると、台湾の李元簇副総統は11日、グアテマラ訪問の途中、 ロサンゼルスに到着した。副総統は12日にグアテマラに向かい、14日のアル ス新大統領の就任式に出席。副総統は台湾出発に先立ち、米国から通過査証を発 給されているが、中国政府は査証の発給に反発していた。副総統は帰路の16日 にも、ロサンゼルスに立ち寄る。

 10日の新華社電によると、中国の江沢民国家主席は10日、ブッシュ前米大 統領と北京の中南海で会談した。台湾問題を中心とした米中関係について意見が 交わされたとみられる。ブッシュ氏は李登輝台湾総統の訪米で米中関係が悪化し ていた昨年9月にも訪中、江主席らと会談するなど、両国関係の節目で非公式の パイプ役を果たしている。

 時事通信などによると、外務省の林貞行事務次官は、12日の日本記者クラブ での会見で、米国が李元簇・台湾副総統に対し通過ビザを発給したことに関連し て、日本にも同様の申請があった場合の対応について「一つの中国というのが日 本の基本政策なので、それにのっとって極めて慎重に検討する」と述べ、発給に は慎重姿勢を示した。

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【香港返還】
李鵬首相が英外相と会談

 北京発10日の共同通信によると、中国の李鵬首相と英国のリフキンド外相は 10日、来年7月に返還される香港問題などについて会談した。外相が返還後の 香港に「高度の自治」が必要だとして民主的システムの維持を求めるなど、両国 間の認識の相違が浮き彫りになった。

 会談後、外相が記者会見で明らかにしたところによると、選挙で選ばれた香港 の「立法評議会」などを返還後撤廃するとの中国側の姿勢に、外相は「憂慮して いる」との言葉で反対を表明。議員資格の継続を求めたが、李首相は従来通りの 見解を繰り返したという。

 また返還後の「香港特別行政区」の行政長官について、外相は「香港の公務員 と住民の支持と尊重を得られる人物」を、と民意を反映した選出を求めた。李首 相は人選の重要性は認めたが、具体的な選出方法に言及することは避けた。中央 政府による任命との方針に変更はなさそうだ。

 外相は政治犯、魏京生氏の問題にも触れ、民主化、人権への配慮を要求したが、 議論は平行線をたどった。

 中国中央人民放送は、李首相が会談で「一国二制度や高度の自治を保障し、中 国は香港特別行政区に一人の役人も派遣しないし、同区から一銭の金も召し上げ ない」と語ったと伝えたが、外相との論議の内容には触れなかった。両国が掲げ る「高度の自治」の内容をめぐり、双方の駆け引きが続きそうだ。

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【人権問題】
魏京生氏裁判の判決文

 去年12月に北京で行われた魏京生氏の一審裁判の判決文は以下の通りである。

北京市第一中級人民法院
刑 事 判 决 書
(1995)一中刑初字第1944号

  公訴机關 北京市人民檢察院分院

  被告人魏京生,男,四十五歳,漢族,安徽省巣縣人,无業,住北京市西城区 阜外北四巷六門二号。一九七九年十月因犯反革命罪被判處有期徒刑十五年,剥奪 政治權利三年,一九九三年九月十四日被假釋。一九九五年十一月二十一日被逮捕。 現羈押在北京市公安局看守所。

  辯護人張思之,北京市中北律師事務所律師

  辯護人李会更,北京市通正律師事務所律師

  北京市人民檢察院分院以被告人魏京生犯有陰謀顛覆政府罪,向本院提起工訴。 本院于一九九五年十二月收到北京市人民檢察院分院起訴后依法組成合議庭,于一 九九五年十二月十三日,公開開庭審理了本案。北京市人民檢察院分院檢査員王忠 華、王化軍出庭支持公訴,被告人魏京生及其辯護人張思之、李会更到庭参加了訴 訟。本案經合議庭評議,現已審理終結。

  北京市人民檢察院分院起訴書指控,被告人魏京生書寫反動文章在境外發表, 炮制陰謀顛覆政府的行動計劃,與非法組織成員相互勾結,進行了旨在陰謀顛覆政 府的犯罪活動。

  在審理過程中,被告人魏京生對其書寫文章和《需要幇助的項目簡介》的事實, 以及爲[ban4]“民運銀行”買下了北京西便門城市信用社百分之十二点五的股分, 籌[ban4]現代美術展等行爲供認不諱。但否認其行爲構成陰謀顛覆政府罪,被告人 魏京生的辯護人認爲,魏京生没有陰謀顛覆政府的主觀故意和具体行爲。

  經審理査明:

  被告人魏京生在服刑期間及假釋以后,書寫并在香港《明報月刊》、《開放》 雜志等境外報刊上發表了《中共的人權觀與納粹同類》、《救星還是災星》、《毛 澤東給我們的最好教導》、《[huang3]言无助解决西藏問題》等文章,攻撃、誣蔑 社会主義制度是“專制社会主義”,我国政府是“独裁專制的政權”,誹謗中国共 産党“頑固的(地)持有納粹同類的人權觀”,煽動人們“不能指望救世主,某某 青天解脱或解救我們”,“必須認清毛澤東和他手下的一夥暴徒的真面目,并與之 抗争”,并鼓吹“西藏无疑是一个擁有主權的国家”,爲推翻人民民主專政政權和 社会主義制度,分裂国家,制造輿論。

  被告人魏京生爲達到陰謀顛覆政府的目的,“掀起足以動搖現政權的風波”, 策劃了陰謀顛覆政府的行動計劃。該計劃中称:

  一、爲民運全面活動的便利,需要有一个周轉和保存資金的合法金融机構。以 便能更好的(地)使用(應)將来瞬息万變的形勢變化,更快地从資金方面支持民 運活動;二、買下几家全国性和地区性的報紙,作爲民運宣傳方面的重要側面;三、 開[ban4]一家組織文化活動的公司,并策劃、組織一些非政府的畫展、演出、出版 等活動形成一種同情并與民運協調的文化界力量或組織;四、工会運動需要開展, 需要民運方面去参預、領導和幇助;五、(設立)政治受難者救助資金;六、(設 立)統戰工作或叫非公開活動經費。

  被告人魏京生爲實施上述陰謀顛覆政府的行動計劃,尋求活動經費,書寫了 《需要幇助的項目簡介》,列述了其行動計劃的内容及進行的部分活動的情况,并 指使其秘書童屹將《需要幇助的項目簡介》打印后,交給了境外某組織負責人,索 要数十万美元作爲活動經費。被告人魏京生爲籌[ban4]所謂“民運銀行”,買下了 北京西便門城市信用社百分之十二点五的股分。爲了“形成同情并與民運相協調的 文化界力量和組織”,被告人魏京生以其弟的名義在香港注册了“生涛有限公司”, 并以該公司的名義在北京籌[ban4]“中国、日本、韓国現代美術展”。魏還搜集了 数十人的“政治受難者”名單,并給“在日中国人團結連(聯)合会”寫信,尋求 “救助資金”,要求承担“大陸政治受難者”的“救助工作”。被告人魏京生還積 極與境内外曾因犯反革命罪被判過刑的王丹、劉青等人串聯,研究所謂斗争策略, 策劃將非法組織勢力結合起来,爲陰謀顛覆政府作組織上的准備。

  上述事實,有从被告人魏京生住所査獲的部分文章手稿及文章打印稿,有魏京 生秘書童屹的證言,有境外報刊發表上述文章的復印件,有査獲的《需要幇助的項 目簡介》手稿,有魏京生購買北京西便門城市信用社股分的書證,有魏京生與劉青 的書信手稿及打印件,有籌[ban4]現代美術展的書證,有魏京生與王丹談話録相的 翻録材料,有魏京生給“在日中国團結連(聯)合会”書信的手稿及刑事科学技術 鑒定結論等在案佐證,事實清楚,證据確實、充分,足以認定;被告人魏京生對其 書寫文章的事實及書寫《需要幇助的項目簡介》,爲[ban4]“民運銀行”買下了北 京西便門城市信用社百分之十二点五的股分,籌[ban4]現代美術展等行爲,亦供認 不諱。

  本院認爲,被告人魏京生曾因犯反革命罪被判刑,在服刑期間和被假釋以后, 又書寫并在境外發表攻撃、汚蔑我国人民民主專政的政權、社会主義制度、中国共 産党的領導及分裂国家的文章,爲推翻国家政權制造輿論;制定行動計劃;進行陰 謀顛覆政府的犯罪活動。被告人魏京生以推翻人民民主專政政權和社会主義制度爲 目的,實施了危害中華人民共和国的行爲,已構成陰謀顛覆政府罪,依法應予懲處。 北京市人民檢察院分院指控并經本院審理査明的被告人魏京生犯陰謀顛覆政府罪, 事實清楚,證据確鑿。被告人魏京生的辯解和辯護意見缺乏事實和法律根据,不能 成立,故不予采納,本院根据被告人魏京生犯罪的事實,犯罪的性質、情節和對于 社会的危害程度,依照《中華人民共和国刑法》第九十条、第九十二条、第五十二 条及第六十条之規定,判决如下:

  一、被告人魏京生犯有陰謀顛覆政府罪,判處有期徒刑十四年(刑期自判决確 定之日起計算;判决執行以前羈押一日折抵刑期一日,即自一九九五年十一月二十 一日起至二〇〇九年十一月二十日止);剥奪政治權利三年。

  二、在案扣押之供犯罪所用的本人財物予以没收(清單附后)。

  如不服本院判决,可于接到本院判决書的第二日起十日内向本院提交上訴状和 副本,上訴于北京市高級人民法院。

                審 判 長     王 明
                審 判 員     陳芝芳
                審 判 員     王宜生
                  一九九五年十二月十三日

                書 記 員     楊 旭

         没收證物清單
1.生涛公司章                         1枚
2.英文打字机(ROVER 2000、OMEGA 1300T) 2台
3.計算机(長城286型顯示器、主机、打印机)         3件
4.鍵盤(JTC)                       1台
5.磁盤(MAXELL3寸高密)                8張
6.磁盤(MAXELL5寸高密)               11張

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【政治関係】
“官官接待”を批判

 中国共産党機関紙・人民日報は10日、一面トップに掲げた評論員論文の中で、 会議や式典などに党や政府の指導幹部を招いて接待する、いわゆる中国版の“官 官接待”について、表面だけを華々しく飾る形式主義の結果であり、人民を苦し めて金を浪費するだけだ、と厳しく批判した。

 同論文は「精神を集中して大事をなせ」と題し、党・政府の指導幹部の在り方 を論じたもので、「指導者が参列するだけで、その会議、活動、式典などが品格 を持ち、価値が上がるように思うかもしれない」が、実際は人々の“小道具”に されているだけだと指摘。「指導者として必要な交際は当然しなければならない。 しかし、朝から晩までこのように“会場巡り”をしていれば、精神を集中して大 事をなすなどということはできるはずがない」と強調、“官官接待”に対する幹 部の自戒を促した。

 同論文はまた、一日中会議ばかりしていたり、文書の山に埋もれてしまってい るような幹部も批判、各級政府機関はこうした問題の解決にまじめに取り組むべ きだと書いている。

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【経済政策】
2010年までに税収倍増を計画

 11日の上海証券報によると、中国は今後5年間で法人への課税を年平均10 %引き上げ、2010年までに税収を現在の2倍にする計画である。

 中国政府は、徴税に関する基本法の制定を含め、徴税方式の近代化や税制の改 革に向けて、一連の方策を講じていく方針。また、第9次5カ年計画(1996 ―2000年)中に、免税措置を徐々に撤廃し法人税率の一本化を図る。外国企 業の優遇措置を廃止し、国内企業と同じ法人税率を適用する問題では、記事は、 具体的な実施時期に触れていない。中国政府は慎重な姿勢を見せているという。

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【中日経済】
スーパーの中国進出が本格化

 読売新聞によると、国内大手スーパーの中国でのチェーンストア展開が本格化 してきた。西友が今年4月、北京市郊外で百貨店形式の大型店を開店するほか、 ジャスコも年内に上海、広州にスーパーを開店する予定だ。ニチイは97年中の 大連市内への出店を計画している。さらに、昨年秋に天津に一号店を開いたダイ エーは、新たに同市内に10店舗をオープンする。中国の外資導入策と、個人所 得の伸びに伴う消費市場の拡大が、中国進出の背景にある。ただ、中国側との交 渉が難航して出店を断念するケースもあり、事業が順調に拡大するかは、不透明 な部分も残されている。

 中国政府は、92年ごろから、流通・小売業を近代化するため、上海など大都 市圏で、外資系スーパーの出店を認める政策をとっている。外資系スーパーにと っても、「沿海部の都市では個人の年間平均所得が、1500ドルに達し、スー パー経営が成り立つだけの購買層が出来てきた」(大手百貨店)ことが、出店意 欲を刺激している。

 ダイエーは、「中国の大衆に、日本と同じやり方で売れるかどうか試す」(中 内功会長兼社長)狙いもあり、売り上げなどが順調なら、天津以外の地域へも店 舗を拡大していく方針だ。他の大手も進出の目的はほぼ同じで、高度成長が続き、 所得向上が著しい中国沿岸部への進出を大きなビジネスチャンスととらえている。

 また、日本での価格競争が激化している中、生産コストの安い中国への進出は、 スーパーの自主企画ブランド(PB)商品を開発するうえで、「現地メーカーと 直接、商品開発について意見交換ができる」(西友国際事業部・飯田晴雄マネジ ャー)メリットがある。

 ただ、ダイエーが北京市内で計画していた大型ショッピングセンターの出店が、 中国政府の認可が得られず95年11月に断念するなど、「外国資本スーパーの 増加に伴い、中国政府の姿勢が厳しくなってきた」(日本貿易振興会)との見方 もあり、相次ぐ進出はある程度のリスクを伴うものにもなりそうだ。

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【中日経済】
全信連が上海に駐在員事務所設立へ

 時事通信によると、全国信用金庫連合会(全信連)は10日までに、上海に駐 在員事務所を設立する方針を決めた。信用金庫の取引先企業が相次いで進出して いる中国本土での金融業務を強化するのが狙い。今春に支店に昇格させる香港駐 在員事務所の業務が軌道に乗り次第、設立準備に着手し、「来年の早い時期に設 立したい」(全信連幹部)としている。

 上海は将来、同国の金融センターに成長することが見込まれている。このため 全信連は、香港に加え上海を中国の拠点とすることにより、現地での融資や外国 為替業務などの拡大を図る。将来的には「設立済みのシンガポール駐在員事務所 とも連携させ、アジア全地域で国際業務を強化したい」(同)考えだ。

 上海駐在員事務所は、全信連の海外拠点としてはニューヨーク支店、ロンドン 駐在員事務所などに次ぎ、6番目になる。

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【経済協力】
中国企業にディーゼルエンジン技術供与へ

 時事通信によると、日産ディーゼル工業は12日、中国のエンジンメーカー朝 陽柴油機公司(遼寧省朝陽市)に対し、ディーゼルエンジンの技術を供与する方 針を明らかにした。

 日産ディーゼルは、中国の大手自動車集団・東風汽車公司や住友商事などと、 主に積載量10トン級のトラックを、浙江省杭州市で1997年から年間約5千 台を合弁生産する予定。エンジンは当面、中国製と日本からの輸出で賄うが、現 地での調達先として東風傘下の朝陽柴油に着目、昨年11月に技術援助を提案し た。今年後半にも、ライセンス供与する見通し。これにより、部品の現地調達率 を引き上げるとともに、コスト削減を図る。

 また、日産自動車の辻義文社長は8日、中国政府に申請していた小型トラック の合弁生産の認可が有力になったことを明らかにした。日産は1993年、中国 の東風グループの商用車メーカー「中国鄭州軽型汽車」などとの間で商用車の生 産、販売を行う合弁会社「鄭州日産汽車」を設立。大きな需要が期待できる小型 トラックを現地生産し、中国国内での販売を計画している。

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【中露関係】
ロシアが遼寧省に大規模原発を建設へ

 モスクワ発、毎日新聞の報道によると、ロシアのミハイロフ原子力相は6日、 中国と近く核平和利用協力条約を結び、遼寧省に原子炉4基からなる大規模原発 を建設する計画を明らかにした。建設費は総額約20億ドル。すでに調査を終え、 安全性に関する報告を準備中という。

 インタファクス通信によると、同条約は核兵器産業の民需転換や核熱合成、ウ ラン採掘・精製、核廃棄物利用などの分野で協力し合うことを定めている。また、 ウラン濃縮工場やアイソトープ利用企業の建設も検討している。

 原子力相は調印時期を明言していないが、エリツィン大統領が予定している3 月の訪中時に調印されるとみられる。エリツィン大統領は1992年12月に初 訪中した際、核の平和利用、軍需産業の民需転換の協力などをうたった共同宣言 に調印していた。

 なお、10日の中国新聞社電が「経済参考報」の報道として伝えたところによ ると、中国では第9次5カ年計画期(1996―2000年)に、新たに合計出 力660万キロワットの原子力発電設備が稼働を開始する。既に稼働している発 電設備を加えると、原発総出力はおよそ1000万キロワットとなる。

 秦山原発2期工事(60万キロワットの発電機2基)が完了するほか、広東第 2原発(100万キロワットの発電機2基)、秦山重水炉原発(70万キロワッ トの発電機2基)、遼寧原発(100万キロワットの発電機2基)が建設される。

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【社会之窓】
中国の孤児院で毎年数千人死亡?

 北京発7日時事電によると、国際人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ は7日、中国の国立孤児院に収容された子供たちは劣悪な環境に置かれ、手抜き 医療や飢えによって毎年数千人が死亡していると非難する報告書を発表した。

 中国政府の統計を含む公式情報から作成された同報告書によると、こうした孤 児の多くは国の政策である産児制限に違反して生まれた子供で、身体や精神に障 害を持った者も含まれている。「親に捨てられた子供の数を最小限に抑える政策」 のため、中国の孤児院は世界的にも例がないほどひどい状況で、「収容された子 供の大半は成人するまで生き延びる望みがない」という。

 報告書執筆者の一人で、ヒューマン・ライツ・ウォッチ香港事務所のロビン・ マンロー所長は「中国政府は“生存権”が最も重要な人権だとしているが、実際 には、一番無力な、両親に捨てられた子供たちを意図的に飢えさせている」と批 判している。

 共同電によると、これに対して、中国上海市の孤児院、上海市児童福利院は8 日、外国人記者を同孤児院に招き、人権団体の主張を「全くのうそ」などとして 強く否定した。この報告書で多くの虐待があったとして子供の「大量死」の責任 を問われた韓偉成・元院長は、報告は資料提供した元職員の女性が「米国に出国 するためにでっちあげた」と主張。子供の年間死亡率は当時、最高で19%だっ たとし、入院時に病気の子供が多いことも原因だったと説明した。 また、同席 した上海市民政局の施徳容局長は「報告を出した組織の意図を疑っている」と述 べた。

 また、中国国営新華社通信は9日、浙江省杭州市にある孤児院を紹介する記事 を配信し、医療や教育を含めて十分な体制が整っていると強調した。新華社電が 紹介した孤児院には16歳以下の250人が収容され、うち100人は重度の精 神障害児。一般職員のほかに13人の教員、3人の医師がおり、障害児の教育カ リキュラムも完備。この孤児院に対する政府の年間支出額は1991年以来、平 均18・4%も増えているとして、記事は社会福祉の充実ぶりをアピールしてい る。

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【社会之窓】
国産漫画で日本漫画の浸透を防ぐ試み

 中国の子供たちが、次々と日本からやってくる漫画と主人公たちに心を奪われ る現状に嘆き、中国の映画会社と出版社が、中国製のアニメとコミックの製作に 乗り出した。

 北京の路上に並ぶ本の売店をのぞくと、数十種の漫画が並び、そのほとんどが 中国語に訳された日本のコミック。バスケットボール漫画の「スラムダンク」は 「籃球飛人」。「幽遊白書」はそのまま。中国色のある「七竜珠」(ドラゴンボ ール)は特に人気がある。1冊は5元(約65円)前後で、小中学生がお小遣い で買っていく。11日放送の、中国中央テレビの特集番組では、「何冊もってい るの」との記者の質問に、子供たちは「百冊以上」「四百冊」「千冊」と答えた。

 中国の大人たちは日本漫画の浸透力にあわて、数年前から、中国独自の漫画の 必要性を論じていた。独自文化が子供に伝わらないこととや、日本漫画に刺激的 な場面があることなどが大きい。

 上海美術映画製作所は中国の歴史人物の子供時代を描いた百回シリーズのアニ メを企画。一部、放映を始めている。浙江人民美術出版社も春秋戦国時代の英雄 の子供時代などをコミック化に取り組んでいる。江沢民国家主席と李鵬首相はこ うした動きをを高く評価、激励し、人民日報など12日付の各紙が両首脳の言葉 を大きく報道した。

 江主席は「少年児童は中華民族の希望であり未来である」「彼らが中華民族振 興の遠大な志を確立するのを助け、理想と道徳、文化、規律ある社会主義の新人 に育てることは、文芸工作者の歴史的責任だ」などと訴え、中国独自のヒーロー を子供たちの友だちにさせるよう求めた。

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【小説連載】
ニイハオ神戸の街(1)

栗田和成

 上海――中国大陸において常に経済の先頭を走ってきた街、それは、同時に大 陸における生活の生臭さの縮図であり、流行の先端を走る大都会でもある。この 大陸における一大中心都市は長江の下流域にあり、長江を巨大な龍に例えれば、 上海はその頭の部分にあたる。この街は大戦後は政治優先の政策がとられていた ため、特別な脚光を浴びることなく、ただ、うどの大木のように町並みを広げ続 けた。黄浦の鉛色の河がその上海の歴史を強調するかのように、ただけだるく、 流れ漂っている。  しかし、この大都会もついに再び脚光を浴びる時が来た。政府の改革開放政策 のため、いままでの内陸部中心の経済政策から転換し上海の位置はますます重要 になろうとしている。  一九九三年四月、浦東に完成しようとする東洋一高いテレビ塔が、再びやって 来た上海の春を象徴し、鉛色の河は銀色に変わり、うどの大木はコンクリートと ネオンサインのジャングルに変わろうとし、まさに改革開放の船出の銅鑼が鳴っ ている感じである。だが、この船の着く港を誰も知らない。

 この黄浦河に赤錆のかかった三隻の船が連なって走っている。李秀麗が乗る予 定の大阪行き鑑真号に比べたら、周りの船もどれも似たようなものである。三隻 の船を追いながめながら、秀麗は昨日、南京の中山陵での別れを想いだしていた。

 「明日は貴方に上海まで送ってもらいたいわ、でも、お母さんがうるさいの。」  「今日で別れるなんてつらいなあ……、最後の時まで一緒にいたいよ。昨日も 君の夢を見んだよ。それは僕が日本の港に着こうとしている夢なんだ。君は岸壁 で僕を迎えている。はっきりと解るんだ。でも君は僕を探しながら、いつまでた っても気が付かない。僕は大きな声で秀麗!李秀麗!と叫んだ。その時、目が醒 めたよ。……」  「ありがとう、この前、私が日本に行くんで、お別れに友達の陳艶が来たでし ょう。その時、私がいないんで、彼女、お母さんといろいろなこと話をしていっ たわ。その時、貴方のことも話してしまったの。私、内緒にしてとお願いしてい たのに……、その晩、お父さんも、お母さんもとても怒って、お母さんは泣くし、 お父さんは私の小さい時に病気したことや、ケガしたことを言うの。私、一人で 上海に行くと言ったけど、どうしてもダメだって。……」  「仕方ないよ。僕には嫁さんがいるし、君の両親が心配するのは当たり前だよ。」  「日本に着いたらすぐに電話するわ。」

 中山陵は南京市内から東の方に位置し、市内を見おろす小高い丘の上にあり、 辺り一面は緑の松林で、中国建国の父・孫文を奉っている所である。その雑木林 の中で先ほどキスをしたことを思い出しながら秀麗は答えた。頬は少し紅い。久 しぶりに唇を交わした気恥ずかしさよりも、これで長い別れになることへ、なに か胸にこみ上げるものがあった。彼女にとって劉佳東の存在はすでに友人以上の 存在であった。

 「本当に心配だなあ。君は兄さんが東京にいるからいいけど、大阪と東京はず いぶん離れているんだろう。」  「新幹線で三時間ぐらいと聞いたわ。」  「じゃあ、上海と南京ぐらいだね。」  「距離でいうと、もっとあるみたい。」  「僕たちも離れてしまうね。」  「そうね、私達、結婚できるといいわね。そして、いつまでも一緒にいたいわ。 ……でも、まず外国の生活が先ね。」

 二人は歩きながら中山陵の下の階段まで二人は降りて来ていた。  この時、「新街口、新街口」と客を呼び込むミニバスの車掌の甲高い声がした。 この声と、小さい時から備わった強気の性格が、すぐに自分を取り戻すことがで き、幾分紅った頬も既に醒め、中国風の面長な顔に戻っていた。

 このことを考えながら、昨日、父の李才之が南京から上海まで送ると言ったと き、いやで仕方なかった。その時は内心、劉佳東に送ってほしかったのである。  「大丈夫よ、自分一人で……、これぐらい出来ないで、日本で一人で生きてい けないわ。」と、両親に口答えしながら、列車を降り、いざ上海駅前の雑踏を歩 くときは、さすがに李才之に感謝せずにはおれなかった。

 劉佳東は妻がありながら、秀麗がつき合っているいることを母の孫淑は非常に 心配していた。秀麗と仲良しの陳艶から秀麗と劉佳東の関係を聞かされた時は、 本当にびっくりした。陳艶は秀麗から劉佳東との関係について口止めされてはい たが、秀麗の両親に少し話しておいた方が、むしろ、秀麗のためだと思っていた のである。陳艶は秀麗とは幼なじみでもあるし、小中学、高校と一緒であり、そ の上、同じホテルのフロントで勤務していた。

 「小麗、お前も二七才になったし、私も大人だと思っている。日本に着いたら、 何でも小英に相談するんだよ。」  鑑真号を目の前にして父の李才之は秀麗にこう語った。父の李才之は南京大学 に努めて既に十数年になり、来年は本来ならば定年であるが、最近の改革開放経 済で仕事の量が増えてしまったらしい、引き続き学校で勤務することになってい る。学者タイプのおとなしそうな性格だが、眼鏡をかけた目の目尻の皺の大きさ が、学者人生の長さと重厚感を漂わせている。年期の入った眼鏡のレンズがキラ リと光った。父は李秀麗のことを小麗と呼び、兄の李英生のことを小英と呼んで いた。父が小麗と呼んでくれる低く響く声とも当分お別れである。  いつも、話しかけられると、うるさいと思うことが多かったが、この時は素直 な気持ちになれ、父の言葉を受け入れることができた。それだけに、何か後ろ髪 が引かれるような思いをしながら船に乗り込んだ。

 船上の風は四月といってもまだ冷たい。秀麗は春風に長い髪をなびかせながら、 寧波から来た呉芸華と共に二階のデッキにいた。既に船は大阪湾に入り、左の友 ヶ島がはっきりと見えるし、ときどき大きなコンテナ船がすれ違い、その隙間に 木の葉のような漁船が止まり、何か魚を取っているようである。呉芸華とは昨日、 同部屋で初めて会ったが話しをしているうちに、同じ日本語学校に行くことがわ かった。しかも、住む予定の寮も同じであり、知らない土地に行くにしては、心 強い味方となる。昨日、長江(揚子江)から東シナ海へ出た時は非常に揺れ、生 まれて初めて、船に乗って気分が悪くなった。ほとんど寝ていたが、ときどき、 秀麗は呉芸華に声をかけ、励ましあった。  今、進んでいる大阪湾はその時と比較すると、比べようがない程静かである。 また、現実に見える船の数の多さが心をなごませてくれる。

 「いいなあ……、お姉さんは日本にお兄さんがいるんでしょう。私、日本に行 っても一人ぼっちだし、友達もあんまりいないわ。保証人は大阪の叔父さんの紹 介なの。叔父さんは去年、大学の客員教授として日本に来てるの。でも、北京に 住んでる叔父さんで、私、今まで一度も会ったことないわ。だから、日本に着い たら、私を助けてほしいわ。今日は港には寧波の友達が迎えにきてくれるの。昔 の友達で、今は、あんまり、つきあいは無いけど、誰か来てもらわないと困るで しょう。」  「私は兄が東京から迎えに来てくれるけど、本当は東京まで飛行機で行けばよ かったけど、保証人の挨拶や、住む所のこともあるでしょう。それに、お金もも ったいないし。それで、ここで待ち合わせになったの。……大阪には何人か南京 での知り合いがいるわ。でも、たいしたつきあいはないし、大阪では私も一人ぼ っちよ。」  秀麗は少し考えながら、話を続けた。  「大阪では頼る人はいないけど、神戸に一人、知り合いの社長がいるわ。大阪 と神戸は近いと聞いたけど、どれぐらいで行けるのかなあ。」  つぶやくような言い方に、呉芸華が興味を示し、  「神戸の人ってどんな人?」  「私が南京のホテルで働いているとき、何回か頼まれて通訳をしたことがある わ。それから、食事とカラオケにも一緒に行ったことがあるわ。」  「じゃあ……お姉さんは日本語が上手なんですね。」  「まだ、完全には解らないけど、日常の言葉は、あんまり問題はないわ。専門 的な言葉や、難しい話はだいたい漢字で書いたら解るでしょう。だから、ノート と鉛筆をもって話せば大丈夫よ。でも、まだ語学に自信がないので、半年間は日 本語学校に行くことにし、それから、神戸大学の修士課程をうけることにしたの。 ここは、父の知り合いの教授もいるし、紹介してもらっているから、日本に着い たらいずれ挨拶にいくつもりよ。」  「神戸の社長って、どんな人、……アルバイト紹介してくれないかな。私、ま だ日本語といったら、『あいうえお』を覚えただけなの、日本語できないとアル バイト探すの難しいでしょう。」  「日本に衣服を輸入しているみたい。それから、上海でも少し投資しているそ うよ。……日本での仕事ははっきりとはわからないけど。そうそう、その時、も らった名刺、今持っているわ。」  バックの中からいくつかの名刺を一度に取りだし、探してみた。  「ああ、これ。」  名刺には神戸市中央区の住所とカタカナで会社の名前と、代表取締役奥田隆史 と書いてあった。呉芸華には、まだカタカナがわからないらしい。ちょとのぞき 込んで返しながら 「何才ぐらいの人?」と聞いた。  「五〇才くらいかなあ……、一応、日本に着いたら挨拶にいくわ。南京を出発 する前に手紙を出しているの。」  「お姉さんは恵まれているのね。私、まだ日本のことはよく解らないけど、日 本でアルバイトしてたくさんお金持って帰りたいの。お父さん、私の就学のため 借金してくれたわ。本当は日本人は嫌いだけど、日本人と結婚してもいいと思っ てるの。」  呉芸華はまだ二〇才になったばかりである。高校を卒業する時、外国へ留学し たいと地方官僚の父にねだって、大学にも行かず、就いた仕事はすぐに止め、ブ ラブラしながら生活し、チャンスをつかもうとしていた。たまたま、母親の親戚 が日本に客員教授として来ていたため、無理に保証人を探しだし日本語学校の就 学生として来れたのである。  秀麗は呉芸華と話ながら、まだ子供だなと思った。思ったことは口に出し、す ぐに行動するところは、一般的な中国人であるが、彼女の場合、それだけでなく 表情がすぐに顔に出て来るため、それだけ子供っぽさを感じさせた。しかし、同 性として、留学の意志を通すために、ブラブラして親にねだり続けるなど、なに か反感を感じるものもあった。

(無断転載および無断利用禁止/つづく)


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