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     ・=・=・ 中国関係オンライン日本語総合誌 ・=・=・
             Ka  Sei  Wa  Go
             華  声  和  語
             Hua  Sheng He  Yu
             == 第528号 ==
 2005年(平成17年)3月 10日発行  1994年(平成6年)11月 1日創刊
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目  次●com/j2005/03a.txt
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新聞簡訊 ●
全国人代 ●1、反国家分裂法案を提出、台湾独立に武力行使も
全国人代 ●2、05年経済成長率目標は8%前後
全国人代 ●3、豊かさの陰に農民の怒り
靖国参拝 ●両国のメンツが絡み軟着陸はますます困難
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【新聞簡訊】
★[03/09] 中国人民銀行9日発表の元レートは次の通り。(単位、元)
日本円(100円)       7・8702
米ドル(100ドル)    827・65
香港ドル(100ドル)   106・07
ユーロ(100ユーロ)  1094・06

★[03/09] 毎日新聞によると、香港の董建華行政長官(67)は10日にも、2
期目の任期(07年6月末まで)途中で行政長官職から退くことを表明する。国
政助言機関である中国人民政治協商会議の最終日(12日)に副主席(現在は2
4人)に選出されることが確実視されている董氏は、10日午後に北京入りする
予定で、事実関係の説明を求める声の高まりに配慮したものとみられる。

★[03/09] 共同通信ニュースによると、謝旭人・国家税務総局長は9日の記者会
見で、貧富の格差是正に向けた税制の活用について「中国の収入格差が拡大して
おり、社会的公平確保のため税制による所得分配機能を活用する」と述べ、前向
きな姿勢を示した。具体的には徴税管理強化などを挙げた。

★[03/09] 共同通信ニュースによると、台湾の呂秀蓮副総統は9日、中国が台湾
独立阻止に向け採択を目指す反国家分裂法案に対し「台湾の法的地位を研究し、
法律戦で対抗すべきだ」と述べ、国際法の見地から台湾が「主権独立国家」であ
ると反論していく意向を示した。

★[03/09] 共同通信ニュースによると、中日の議会関係者によると、両国は9日
までに、両国国会議員による定期交流実現に向け、本格的な調整に入った。小泉
純一郎首相の靖国神社参拝問題などで両国政府間の関係が冷え込む中、議員の交
流を通じて日中関係改善に向けたムードづくりを進めるのが狙い。両国とも年内
には実現したい考えだ。

★[03/09] NHKニュースによると、去年一年に収賄や公金横領などの汚職腐敗
で摘発された公務員が、閣僚級の幹部十一人を含む四万三千人あまりに上り、大
型事件の摘発が増えるなど、汚職の問題が一層深刻化している実態が検察当局の
トップにあたる賈春旺(カシュンオウ)検察長が、きょう、全国人民代表大会で
行った「最高人民検察院報告」の中で明らかにした。

★[03/09] NHKニュースによると、上海に本拠を置く同国最大級の重電メー
カー、上海電気集団は9日、東京都内のホテルで日本企業に合併・買収(M&
A)や出資を呼び掛ける商談会を開いた。

★[03/09] NHKニュースによると、中国経済時報によると、同紙が実施した世
論調査で、自国製品の競争力の最大の要因としてほとんどの回答が安価な労働力
を挙げ、逆に弱点は「技術」や「ブランド」とする回答が多かった。

★[03/08] 毎日新聞によると、中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)
は、8日の審議で江沢民・前国家主席(78)の国家中央軍事委員会主席の辞任
が了承された。江氏は昨年9月に党の中央軍事委主席を辞任したが、党と国家の
任期がずれているため形式的に国家軍事委主席ポストが残されていた。江氏の完
全引退に伴い胡錦涛国家主席が13日、国家軍事委主席に選出される。

★[03/08] 時事通信によると、外交部の劉建超副報道局長は8日の定例記者会見
で、町村信孝外相が中国に歴史教育の見直しを求める意向を示したことについて、
「中国が歴史問題で反日教育を行っているとした非難は、全く道理がない」と強
く反発した。

★[03/08] 共同通信によると、中国外国為替取引システム(CFETS)はこの
ほどダウジョーンズ通信に対し、外国為替制度改革の一環としてことし5月から、
外国銀行7行と国内銀行2行の計9行からなるマーケットメーカー・システムを
導入するとともに、ドル・円など人民元を介在しない8通りの通貨取引を開始す
ることを明らかにした。

★[03/08] NHKニュースによると、中国では水の需要が高まるなか、用水路の
不足から田畑に十分な水が行き渡らなかったり、水道管の水漏れなどで水道水の
二十パーセントが無駄になっており、効率的な供給システムの構築が課題になっ
ている。政府は、国民に節水を呼びかけるとともに、潅漑施設の整備や、工業用
水の再利用など水の有効利用のための指導や対策を強めていくとしている。

★[03/07] NHKニュースによると、政府は、深刻な電力不足の緩和を目指して
今年、新たに、合わせて六千五百万キロワットを供給できる発電所を建設する方
針を明らかにした。経済発展に伴う電力需要の増加に供給が追いつかず、深刻な
電力不足が続いており、去年は、ほとんどの地域で電力の供給制限が行われた。

★[03/07] 毎日新聞によると、中国人民銀行の周小川総裁は7日、北京の人民大
会堂で記者会見し、4大国有商業銀行の中国銀行と中国建設銀行の2行を近く株
式会社化することを明らかにした。年内の株式上場を目指すとみられる。

★[03/07] 時事通信によると、人民政治協商会議委員の林毅夫・北京大学中国経
済研究センター主任は7日までに、時事通信のインタビューに、人民元の切り上
げに賛成の立場を示し、「切り上げ幅が5%を超えなければ、中国への投機コス
トが比較的高くなる」と語った。5%以内ならば、海外からの投機マネー流入が
抑えられる上、国内問題への影響なども最小限にとどまるとの見通しを示した。

★[03/07] 共同通信経済ニュースによると、マツダ(広島県府中町)は7日、中
国事業を統括する完全出資子会社を上海市に設立したと発表した。中国事業担当
の尾崎清専務執行役員が会長に就任し、今月下旬から業務を始める。資本金75
0万ドル(約7億9000万円)で、従業員は100人前後の見通し。第一汽車
集団(長春市)など、中国の関係各社との連絡、調整もする。

★[03/05] 読売新聞によると、有人宇宙飛行プロジェクトの顧問、黄春平氏(6
6)は4日、読売新聞などと会見し、有人飛行第2弾の「神舟6号」について、
「宇宙飛行士の訓練などすべては計画通り順調に進んでいる」と述べ、最も早け
れば、今年9月にも打ち上げが可能との見通しを明らかにした。また、中国初の
女性飛行士の選抜は「年末から来年初めには始まる」との見解を示した。

★[03/04] 毎日新聞によると、5日から始まる全人大で、女性権利保障法の修正
案が上程され職場での女性へのセクハラ禁止を明記する。「セクハラ」の概念が
明文化されるのは初めて。採択されれば、各企業はセクハラ防止策を義務付けら
れる。同修正案では、就業などの男女平等、家庭内暴力の禁止も規定。北京市民
を対象にした調査では、女性の71%がセクハラに遭った経験を持つという。

★[03/03] 共同通信によると、一人っ子政策に伴い、就学年齢の子どもが減った
影響で、昨年1年間に全国の小中学校3万2000校以上を廃校にした。昨年の
中国の小学生人口は1億1200万人で、一昨年に比べて443万人減少。また
中学生人口は6520万人で、一昨年比で163万人減った。

★[03/02] 共同通信によると、家電最大手、海爾(ハイアール)は1日、ヨルダ
ンに工場を開設した。中東市場に特化した製品を製造するのが狙い。開設式で海
爾の張瑞敏・最高経営責任者(CEO)は「海爾にとって、ヨルダンは中東地域
での製造・販売拠点になる」と語った。

★[02/27] 共同通信によると、河北省易県を流れる易水の北岸で、7000−8
000年前とみられる先史時代の村落遺跡が見つかった。河北省の文化遺跡研究
所などが遺跡のうち1200平方メートルを発掘調査したところ、整然と並んだ
半地下式の住居跡10棟を発見。1区画に集中しており、いずれの住居跡からも
炊事場や居間とみられる跡が見つかった。

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【全国人代】
      1,反国家分裂法案を提出、台湾独立に武力行使も

[03/08] 毎日新聞ニュースによると中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人
代)は8日午前、台湾独立阻止を目指した「反国家分裂法案」が提出され、王兆
国・全人代常務副委員長が法案説明を行った。台湾独立に対して「非平和的方式
を取る」との条文を盛り込み、初めて武力行使に法的根拠を与えている。同法案
は全人代最終日の14日に採択される。

 王氏は法案説明で「祖国統一は台湾同胞を含む中国人民の神聖な職責」との中
国憲法規定に基づく法律であることを強調。さらに「中国は武力行使放棄を承諾
したことはない」と表明。(1)どんな名義、方法であれ、台湾を中国から分裂
させる事実(2)台湾を中国から分裂させることにつながる重大事変(3)平和
的統一の条件の完全な喪失――が起きた場合、国家が非平和的方法を取ることが
できるとの規定を法案にも盛り込んだことを明らかにした。

 国務院(政府)と中央軍事委にあらかじめ、必要な措置を取る権限を与え、全
人代に事後報告できることも明記された。

 王氏はまた、「台湾当局は憲法や法律の形式、住民投票などを通じて国家分裂
に法律的な根拠を与え、台湾を中国から分裂させようとしている」と述べ、台湾
の陳水扁総統が目指す新憲法制定の動きに対抗して、反国家分裂法案を提案した
ことを表明。法案の目的として「台湾独立反対」「平和統一促進」「主権と領土
の擁護」などを明記したと表明した。

 さらに台湾問題は中国の内戦から残された問題で「台湾問題は中国の内部事務
であり、いかなる外国勢力の干渉も受け付けられない」との規定が盛り込まれた
と指摘。一方で、平和的方法で統一を目指すことを優先し、中台住民の相互交流
や経済交流などを促進することも法案に盛り込まれたことが明らかにされた。

 日米など国際社会には同法が中台関係のいっそうの緊張につながることへの懸
念があり、中国指導部は「いわゆる『対台湾武力行使法』や『戦争動員令』では
ない」と強調している。

 ◇反国家分裂法案の要旨

1、立法趣旨
 国家分裂に反対し、平和統一を促進し、台湾海峡の平和と安定、国家主権と領
土を守る。

2、台湾問題の性質
 台湾は中国の一部。中国から分裂させることを絶対に許さない。
 台湾問題は内戦が残した問題。いかなる外国勢力の干渉も受けない。

3、平和的方式によって国家統一を実現
 最大の誠意、最大の努力で平和的統一を実現させる。住民の往来、経済交流な
どを推進。

4、非平和的方式で国家分裂を制止する
 台湾を中国から分裂させる事態や平和的統一の条件の完全な喪失に対し、非平
和的方式及びその他の必要な措置を取る。国務院、中央軍事委に必要な措置を決
定、組織し、全人代常務委員会に報告する権限を与える。
 非平和的方式を取る場合、最大限、台湾住民と在台湾の外国人の生命、財産、
安全と権益を保護する。

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【全国人代】
              2、05年経済成長率目標は8%前後

[03/05] 毎日新聞ニュースによると温家宝首相が5日に開幕の全人代で行う「政
府活動報告」の全容が4日、明らかになった。報告では今年の経済成長率目標を
「8%前後」として昨年実績の9.5%より低めに設定し、積極的な財政政策か
ら穏健な財政政策への転換を明示している。

 第10期5カ年計画(01〜05年)は成長率目標を「7%前後」としていた
が、2年連続で9%台の成長となり、投資の過熱が懸念されていることから、よ
り実情に近づけると共に、安定成長を目指す決意を示す。

 建設国債発行額は昨年より300億元少ない800億元で2年連続で減少する。
報告は「98年以来の積極的な財政政策が顕著な成果を得た」と評価する一方で
「現在は投資規模が既に大きく、穏健な財政政策に転換する条件が必要だ」と指
摘し、政策転換と引き締め政策の継続を明確にしている。

 また、人民元については「穏やかにレート形成メカニズムの改革を進める」と
言及。さらに「急速な経済成長が生み出した貧富の格差や農民問題、幹部の腐敗
(汚職)」などの「突出した矛盾」を指摘。解決に向けて「社会主義調和社会の
構築」の実現に努力することを強調する。

 ◇5日に行われる温家宝・中国首相の政府活動報告の骨子は次の通り。

一、社会主義調和社会を建設する。
一、GDP成長率は8%前後を目標とし、都市の失業率を4・6%以下に抑える。
一、積極財政を穏健財政に転換し、長期建設国債を前年比300億元減の800
  億元にする。
一、穏健な通貨政策を継続する。
一、農業、農村、農民問題の解決はすべての問題で依然としてもっとも重要。
一、高度の新技術産業を発展させる。
一、エネルギー資源の節約を進める。
一、地域協調発展を積極的に進める。
一、国有企業改革を進化させ、非公有制経済の発展を奨励する。
一、穏健な人民元レートの形成メカニズムの改革を進める。
一、行政能力を高める。
一、反国家分裂法は台湾独立を絶対許さないという決意を示す。
一、周辺国家との友好協力関係を強化、地域協力を深化させる。

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【全国人代】
              3、豊かさの陰に農民の怒り

[03/05] 共同通信によると中国の胡錦濤指導部は5日開幕した全人代で、貧富の
格差縮小や官僚腐敗の撲滅をうたう「調和の取れた社会づくり」をキーワードに
打ち出した。高度経済成長の華やかさの一方で、豊かさから取り残された農村住
民や労働者には当局への「怒りと不満」が渦巻く。「胡−温(家宝)」体制発足
から2年。中国社会のきしみ解消を目指す胡指導部の改革は「今年正念場を迎え
る」(中国筋)。

 ▽農業政策 「すべての活動の中で最重要」

 温首相は全人代での政府活動報告で農業政策をこう位置付け、人口の6割を占
める農村部の収入向上のため、農業税を来年中に全廃する方針を表明。弱い立場
の民衆の利益を考慮する「親民路線」の堅持を再確認した。

 ▽農地収用 土地を失う農民
 「役人の目的は農地収用で金もうけすること。中央の政策がわれわれには届か
ない」。2008年の北京夏季五輪を控え、建設ラッシュに沸く首都から東へわ
ずか150キロ。河北省唐山市の農民、張栄さん(35)は怒りで語気を強めた。
 約500平方メートルの農地でアンズとキノコを栽培。数羽の鶏が産む卵の売
り上げを含めると、純収入は都市住民の平均に匹敵するほどだった。
 しかし、数年前に開発区に指定され、地方官僚による収用圧力が強まった。地
元役人は「良い農地は収用しない」との中央政府の方針に抵触しないよう、上級
政府に張さんの農地を「荒れ地」と報告し収用許可を取得。直訴で繰り返し上京
する張さんに罰金を科したり、暴力を振るう嫌がらせを続けているという。
 既に強制収用が実施された近隣の紅石村(仮名)では、農地が補償金の7−2
0倍の価格で開発業者に転売された。同村の女性(51)は「差額は役人と仲介
業者が山分けした」と確信、農地を失った住民らは出稼ぎで食いつないでいる。

 ▽党幹部や官僚の「腐敗」「無能」は深刻
  検察当局によると、昨年1−11月に汚職で立件された役人は全国で4万22
25人。中国誌は中堅幹部の66・9%が市場経済を理解していないとの調査結
果を伝えた。

 ▽貧富の格差の拡大
 貧富の格差も広がっている。農村住民の1年間の1人当たり純収入は04年で、
前年比実質6・8%増の2936元(約3万7000円)。しかし、都市住民の
可処分所得は9422元で農村の3倍以上、中国政府は今年も一層拡大すると予
測、改善の有効な手だてがないのが実情だ。

 ▽騒乱続発 待ったなしの改革
 昨年秋以降、各地で民衆騒乱が発生。北京でも抗議行動が何度も計画され、全
人代直前にも直訴者約500人が拘束されたとの情報が流れた。
 背景には腐敗官僚や不当な手段で豊かになった特権階級への根深い怒りがある。
「きっかけさえあれば、騒乱はどこでも発生しうる」(中国筋)状態で、胡指導
部の危機感は強い。
 胡指導部は「調和の取れた社会づくり」や腐敗撲滅キャンペーンに加え、今年
1月からは「模範党員の育成」と銘打ち、約7000万人の全党員を対象に政治
運動を展開。昨年9月の共産党第16期中央委員会第4回総会(四中総会)で決
定した「党の執政能力強化」の実現に力を入れている。
 メディアを使った弱者重視のキャンペーンを繰り広げ、腐敗や新型肺炎(SA
RS)の対策などに真剣に取り組む姿勢を誇示してきた胡指導部への民衆の期待
が膨らんでいるだけに、成果が出ない際の「反動」も大きくなる可能性が高い。
改革は待ったなしだ。

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【靖国問題】
       両国のメンツが絡み軟着陸はますます困難

 ◇小泉首相 参拝前提の対中外交を指示

[03/08]毎日新聞ニュースによると、戦後60年の節目にあたる今年、中国は9
月に抗日戦争の意義を再認識させる「反ファシスト勝利60周年」の記念式典を
予定している。昨年11月21日、チリ・サンティアゴで小泉純一郎首相と会談
した中国の胡錦濤主席は「05年は敏感な年」だとして、靖国神社への参拝を見
送るよう小泉首相に強く求めた。

 首脳会談では「参拝は不戦を誓うためだ」と反論した首相だが、翌22日の記
者団とのやり取りでは「(靖国問題では)どんな質問が出ても何も申し上げない
ことにした」とコメントを拒んだ。

 中国の靖国参拝批判に不快感を示し続けてきた首相だけに、中国への配慮をう
かがわせる発言だった。日中首脳の相互訪問が01年以来途絶えている現状を憂
えてきた外交当局者の間では、淡い期待も生まれた。

 ところが、ほどなくして首相の基本姿勢に変化がないことを示すエピソードが
漏れ伝わる。

 今年1月5日夜、インド洋大津波被害を受けて開催される被災国支援首脳会議
に出席するため、ジャカルタに向かう政府専用機内でのことだ。

 外務省幹部らを前に首相は語りかけた。「君たち、まさかおれが今年は靖国に
行かないことを前提に外交を考えているわけじゃないだろう?」。直接ではない
ものの、靖国参拝を前提に対中外交を構想するよう指示したに等しかった。情報
に接した者全員が「行くぞ」というメッセージと受け取った。

 同省幹部は靖国問題の複雑さをこう指摘した。「中国に言われての参拝中止は
政治的に不可能だろう。ただし、靖国問題が横たわっている限り、中国絡みの他
の問題は何も解決しない」

 ◇歴史問題から「勝った、負けた」に変質

 01年4月の政権発足以来、小泉純一郎首相の靖国神社参拝は計4回を数える。
8月13日(01年)、4月21日(02年)、1月14日(03年)、1月1
日(04年)と参拝日こそ一定しないものの、「年1回の参拝」という事実は積
み重ねられてきた。

 「よその国が『よろしくない』と言って『はいそうですか』と引き下がってい
いのか、疑問に思う」(04年10月18日、衆院予算委での答弁)

 昨年11月の日中首脳会談以降は控えているものの、小泉首相は中国による参
拝批判をはねつける発言を繰り返していた。外務省アジア大洋州局の幹部は「小
泉さんは『中国にモノが言える政治家』を売りにしている」と指摘する。

 首相の参拝と中国の反発を繰り返す過程で、靖国問題は戦前、戦後の歴史を日
本人がどう認識するかという問題から、いかに中国に対抗していくかという問題
に変質してきた。

 「日中とも靖国問題がここまでこじれるとは考えていなかったのに、双方のナ
ショナリズムに支えられ『勝った負けた』の話になってしまった。」作家の石川
好氏も「小泉首相は日本人に眠っていたナショナリズムを起こしてしまった」と
同様の見方をしている。

 中国のGDP(国内総生産)は日中国交回復時の1972年から04年までの
32年間で50倍以上に膨らんだ。経済的にぼっ興する中国と、90年代に景気
後退期を経験して圧迫感を覚える日本。双方の勢いの違いが、ナショナリズムの
渦を作り出す。靖国問題はその渦の中心に位置している。

 首相の姿勢を世論も受け入れているようだ。毎日新聞の世論調査(昨年12
月)では「参拝を続けるべきだ」が46%、「やめるべきだ」が41%とほぼき
っ抗したが、参拝中止を求める中国に対しては「納得できない」が64%を占め
た。

 また内閣府が昨年12月に発表した「外交に関する世論調査」によると、中国
に「親しみを感じない」と答えた人は前年比10.2ポイント増の58.2%と
過去最高を記録した。80年当時の4倍以上というレベルだ。嫌中感情の高まり
が靖国問題に投影され、中国に弱腰ではいけないというムードを生んでいるよう
だ。

 細田博之官房長官が尖閣諸島の魚釣島にある民間人所有の灯台を国有化すると
発表したのは、中国で最も大切な祝日とされる旧正月の元日(2月9日)だった。
魚釣島は中国、台湾も領有権を主張している。

 政府内では「春節(旧正月)の初日だから中国の役所も休みになる。発表を前
後にずらしたらどうか」との意見もあったが、採用されなかった。中国向け円借
款の停止に向けた政府内の作業や、東シナ海の天然ガス田を独自に試掘する検討
も、同じ対中強硬姿勢という流れの中にある。

 かつて首相とYKKの盟友関係にあった加藤紘一元自民党幹事長は「総理大臣
の個人的な感覚で、将来のアジア政策の発展の芽が摘まれている」と批判する。
北東アジアの安全保障協議や東アジア共同体の構築を首相の靖国参拝が阻害して
いるとの論理だ。

 しかし、政府や自民党内で参拝中止を求める声は極めて少数派だ。大平正芳元
首相の元秘書官で、対中穏健派の森田一元運輸相ですら「ここまできた以上、小
泉政権が続く間は参拝をせざるを得ないだろう」と話す。

 日本側には「中国はもし靖国で成果を上げたら、必ず別の歴史問題で日本を揺
さぶるはずだ」(自民党幹部)との疑念がつきまとう。

 ただし、胡錦濤指導部にとって目下最大の懸案は、急速な経済成長に伴う社会
的ひずみの深刻化だ。余剰労働力が1億〜2億人とされる農業人口、沿岸部と内
陸の貧富の格差、土地の強制収用と補償金の未払いなどによって、全国各地で農
民による暴動が起きている。経済的な不満に、日本への弱腰批判が加わることを
本質的に恐れている側面もある。

 両国のメンツが絡んだ靖国問題の軟着陸はますます困難になっている。

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